ブラック企業の作り方:世界を「数字」で回してみよう(55) 働き方改革(14)(2/9 ページ)
今回取り上げるのは「ブラック企業」です。特にここ数年、企業の規模や有名無名に関係なく、“ブラック企業の実態”が報道でも取り上げられていますが、そもそもなぜ「ブラック企業」が存在してしまうのでしょうか。そして、ブラック企業を撲滅することはできるのでしょうか。
「ブラック企業」は合法的に存在している法人である
では、最初に前回の「政府の地雷? 「若者人材育成」から読み解くひきこもり問題□政府の地雷? 「若者人材育成」から読み解くひきこもり問題」のレビューを始めてみたいと思います。
以下の図は、「若者」に関する「働き方改革実行計画」から逆算して見えてきた問題の正体を示す図です。
前回は、「ニート/フリーター/引きこもり」について、「最初の就職でのスキル取得に失敗すると、そこからの復活戦が恐ろしく難しい」ことを示し、業務スキルが得られず、悪条件での転職を繰り返している40歳近くの人間が、現在40万人いることを示しました。
今回は、この「最初の就職でのスキル取得に失敗させる」ことを前提として存在している企業 ―― 「ブラック企業」について論じていきたいと思います。
最初に確認していただきたいのは、ブラック企業といわれている企業は、法律上の手続に基づいて合法的に存在している法人である、ということです。非合法なテロリスト集団とか、暴力団などとは異なります。
だからといって、企業の中で法律違反がないというわけではありません。しかし、法律違反があるからといって、直ちに法人格が失効するというものでもありません*)。
*)例えば、私たちが犯罪を犯してしまった場合でも、基本的人権(公民権を除く)が失効する訳ではありません。
ブラック企業とは、以下のような特徴を有する企業ということになります。
上記の「(1)法律違反」については、基本的に事実関係の立証が難しく、使用者側の立場が異様に強い(証拠が隠蔽しやすく、箝口令も敷きやすい)などもあり、従業員側が裁判で勝つのは難しいものです(今、少しずつ改善されていますが)。
「(2)制度未整備」は、企業内部の運用方針と言われればどうしようもなく、「(3)過重労働環境」も「成果主義」と言われれば、そこまでの話です。外部から批判されても、それに応じる義務はありません。「(4)売上至上主義」に至っては、資本主義社会の企業の存在意義です。
「(5)や(6)の退社に関する社内からの圧力」については、どんな圧力があろうとも、法律的には、従業員本人の意に反することはできないことになっています。強要すれば法律違反で犯罪行為です。
もちろん、上記の話が、現場の雰囲気を無視した、単なる理想論や極論であることは分かっています。私が知りたいことは、詰まるところ一つだけ、なのです。
彼らは、これらを"無知(善意)"だからやっているのか? あるいは、きちんと理解した上で"戦略(悪意)"としてやっているのか? ということです。
ちまたの記事は、この辺の認定が極めて曖昧です。多くの記事は、"企業=悪の組織"の図式で記事を構築しています。なぜなら、その方が「読者受け」がいいからです(部数が上がり、フォローも付き、PV(Page View数)も上がる)。しかし、問題の根本解決には1ミリも ―― まあ、1ミリくらいは貢献しているかもしれませんが。
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