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新たな世界ハイテク戦争の構図 ―― 米国、中国、Huaweiの3者のにらみ合い湯之上隆のナノフォーカス(10)(2/4 ページ)

米中におけるハイテク戦争では、2018年末以降、Huaweiが台風の目となっている。しかし、筆者には、3つの疑問がある。本稿では、3つの疑問について論じるとともに、世界のハイテク戦争が、米中二国間の単純な対立ではなく、米国、中国、Huawei3者のにらみ合いの構図になっていることを示す。

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風向きが変わってきた

 Huaweiが米国の技術を盗んでいた証拠がない(少なくとも公開されていない)。そのため、米国が世界に呼びかけている“Huawei排除”の風向きが変わってきた。

 当初、「ファイブアイズ」を形成するオーストラリア、ニュージーランド、英国も、米国に同調してHuaweiを排除する方針を固めた。また、台湾もHuaweiを排除することになった。

 ところが、英情報当局は、「リスクは管理可能」としてHuaweiを排除しない方針を示し、ニュージーランドもHuaweiを排除するか否かは独自に決めると発表した。また、ポンペオ国務長官が東欧諸国に米国の方針への協力を求めたが、スロバキアがHuaweiを脅威とみなさない方針を示しているという(日経新聞2月18日)。

 そして、2月25日からスペインで開催された「MWC19バルセロナ」の会場で、英携帯通信大手VodafoneグループのCEOであるニック・リード氏は、Huawei排除を働きかける米国は「証拠を欧州に示すべきだ」と指摘した(日経新聞2月26日)。

 さらにドイツ政府も、次世代通信規格5G(第5世代移動通信)の通信網構築において、Huawei製品の排除を明示しない方針を決めた(日経新聞3月8日)。

 本当にHuaweiが米国の技術を盗んでいたかどうかは、Huaweiが米政府を憲法違反として訴えた裁判で明らかになるかもしれない。

本当にHuaweiは中国政府の手先なのか

 中国事情に詳しい東京福祉大学国際交流センターの遠藤誉先生は、Yahoo!ニュース『Huaweiの任正非とアリババの馬雲の運命:中共一党支配下で生き残る術は?』(2019年1月19日、https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20190119-00111677/)で以下のように述べている。

習近平は「俺の言うことを聞いてハイシリコン社の半導体チップを外販し、中国政府に開放しろ」と迫っているが、任正非は応じていない。そこで習近平はHuaweiの孟晩舟CFOがアメリカの要求によりカナダで逮捕されたのを「チャンス!」とばかりに受け止めて、Huaweiのために「中国政府として」カナダやアメリカに抗議している。こうすれば、いくらHuaweiでも、中国政府の軍門に下るだろうと計算しているのである。

 ここで、習近平は中国の国家主席であり、任正非はHuaweiのCEOである。Huawei傘下のHisilicon Technology(ハイシリコン)は半導体設計専門のファブレスで、AppleのiPhone用プロセッサと同等以上の性能の半導体を設計する実力がある。

 習近平は、この高性能プロセッサを中国の国営企業のZTEなどに外販するように圧力をかけているが、Huaweiは応じないということである。

 もし、これが事実なら、Huaweiは習近平国家主席に反発していることになり、したがって、Huaweiは中国政府の手先ではあり得ないということになる。

 遠藤誉先生のもう一つのYahoo!ニュース『華為Huaweiを米国に売ったのはZTEか?――中国ハイテク「30年内紛」』(2018年12月18日、https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20181212-00107374/)には、さらに驚くべきことが書かれている。

国有企業のZTEと民間企業の華為(Huawei)は中国国内における30年内紛を続けてきた。ZTEを米国に売ったのは同社のユダヤ系米国人法律顧問で、華為を米国に売ったのはZTEだという観測が華人華僑の間で絶えない。

 これを読んだときは、にわかには信じ難い思いがした。しかし、民間企業のHuaweiが中国政府に反発しており、国営企業のZTEと約30年にわたってバトルを続けてきたとすれば、“ZTEがHuaweiを米国に売った”ことが信ぴょう性を持ってくるのである。

 もし、これらが事実なら、米国がHuaweiを攻撃するのも、ある程度は納得できる。しかし、米国がHuaweiを攻撃する理由は、これだけではないように思われる。

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