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次世代メモリの発案から製品化まで:「オープン」モードの研究開発福田昭のストレージ通信(142) 半導体メモリの技術動向を総ざらい(5)(1/2 ページ)

次世代メモリのコンセプト考案から製品化までの道のりは長く、10年近くかかることは珍しくない。今回は、その道のりを見ていこう。

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研究開発の「オープン」モードと「ステルス」モード

 2018年8月に米国シリコンバレーで開催された、フラッシュメモリとその応用製品に関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」でMKW Venture Consulting, LLCでアナリストをつとめるMark Webb氏が、「Annual Update on Emerging Memories」のタイトルで講演した半導体メモリ技術に関する分析を、シリーズでご紹介している。

 なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。

 本シリーズの前回では、次世代メモリの理想と現実の違いを述べるとともに、コンピュータのメモリ階層における次世代メモリの立ち位置をご報告した。今回は次世代メモリのアイデアが誕生してから、製品化に至るまでの道のりを解説する。

 次世代メモリのコンセプトを考案してから、実際に製品を市場に出荷するまでに必要とする時間はかなり長い。10年(120カ月)近くかかることは、珍しくない。ここでは新しいメモリ技術を考案してから製品化までに8年(96カ月)を要するとして、その道のりを見ていく。

 新しいメモリ技術の研究開発には、研究開発の成果を国際学会や学会論文誌などに公表しながら進める「オープン」モードと、研究開発の成果を外部にまったく公表せずに進める「ステルス」モードがある。良く知られているのは、研究開発の前半においては「オープン」モードで進め、後半では「ステルス」モードで進める手法だ。

「オープン」モードの欠点と利点

 「オープン」モードの研究開発では、研究開発の成果を外部に公表することで、「何を研究しているのか」が競合他社に知られるというデメリットが生じる。にもかかわらず、あえて国際学会や学会論文誌などで研究内容を外部に公表するのは、いくつかのメリットが期待できるからだ。

 ベンチャー企業の場合、最も大きなメリットは開発資金の調達と研究者の採用が容易になることだろう。次に、学会発表や論文などが研究者の業績となるので、いざというときの転職に寄与する。また学会発表ではディスカッションによって研究内容に関するフィードバックを得られる。さらには、製造装置ベンダーや検査装置ベンダー、材料ベンダーなどによるアプローチが期待できる。

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