台湾で加速する新興企業エコシステムの構築:科技省のLiang-Gee Chen氏に聞く(2/4 ページ)
台湾では、新興企業エコシステムの構築が加速している。その中心人物が、台湾 科学技術省のLiang-Gee Chen氏だ。EE Timesは同氏にインタビューする機会を得た。
国外から台湾に戻る教育者たち
EE Times: 欧州で毎年行っている求人活動を終えたところだと聞いている。2018年にインタビューを行った時も、同じように米国で求人活動を終えたところだったと記憶している。どのような進み具合なのか。
Liang-Gee Chen氏: われわれの求人活動が広まっていると感じた。ロンドンで行った求人イベントには300人以上、パリでは120人、ベルリンでは250人以の参加者が集まった。2018年と比べると、その数は3倍に増加している。
EE Times: そのような海外在住の教授やポスドク研究員たちに、何を提供するつもりなのか。
Chen氏: 台湾では、1年間当たり60人の教職員を募集しているため、こうした人々を台湾に招いている。例えば、パリで働いている若い台湾人のポスドク研究員は、すぐその場で大学の学部長からの招待を受け入れ、台湾で講義を行う仕事を決めた。また、20年以上にわたる教職の実績を持つ主任教授も、台湾での仕事に名乗りを上げてくれた。
EE Times: こうした人々は、台湾のどのようなところに引き付けられたのか。
Chen氏: もっともな理由が2つある。1つは、優秀な教師は、国家の基盤になるという点。優秀な生徒たちを教えるチャンスを得られるのは、常に魅力的なことだ。しかし、特に台湾のように、生徒が教師に敬意を払い、意欲的に学ぼうとする社会では、さらにその魅力が増す。
2つ目は、台湾が、第4次産業革命の時代に突入したと認識しているという点だ。インテリジェントなインフラが必要とされている。この「研究技術プログラム」によって台湾に戻ってくる人々が、新しい技術を開発してくれると期待している。台湾は、こうした人々と協力することにより、最先端のインテリジェント革命の波に乗りたい考えだ。
EE Times: もちろん第4次産業革命は、台湾だけでなく、中国や欧州など、世界各国で展開されている。台湾には、どのような優位性があるのか。
Chen氏: デジタルの世界には二面性があるということを、多くの人が理解するようになってきた。通信の自由が実現し、誰もが常につながっている状態を維持することが可能になった。その一方で、デジタル社会の台頭により、市民の行動や言動が常に追跡、監視され、厳重に管理されている。
EE Times: 一例を挙げてほしい。
Chen氏: 例えば、中国の「Social Credit System(社会信用システム)*)」がある。もし信用スコアが低い場合は、電車のチケットさえも購入できなくなるという。
*)Social Credit Systemは、中国政府が国民のオンライン上の言動を追跡、評価するためのシステム
EE Times: つまり、インターネットに接続されたデジタル社会へと進展してきたことで、ビッグデータ解析技術を活用した大衆監視という手法により、人々に害が及ぶような社会へと進化したことになる。
Chen氏: 今回の活動を通じて接触したドイツの自動車メーカー数社から、「特に、中国が政治制度を変更したことによって、習近平国家主席に終身主席への道が開かれたため、Social Credit Systemについてとても懸念している」という声が上がっている。既に中国で稼働しているドイツの自動車メーカーの多くは、こうした状況におびえているという。だからと言って、ドイツに戻るには手遅れの状態であると理解しているようだ。
研究者や学生、企業は、研究課題や、ビジネス慣行を実行するための手法などを自由に選択する必要がある。台湾は、その切望されている自由や信頼を提供することができる。
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