SoCインターコネクトの“DIY”はおよしなさい!:Arteris IP幹部の忠告(1/2 ページ)
インターコネクトIP市場の業界再編の動きを見て、インターコネクトのDIY(Do-It-Yourself、自社開発)を検討すべきだろうかと考えている企業もあるかもしれません。しかし、DIYは決して現実的ではありません。
2018年はインターコネクトIP市場で多くの動きがありました。特に話題になったのがIntelのNetSpeed買収とFacebookのSonics買収です。いったい何が起こっているのでしょう? なぜ企業は今になってインターコネクトIPの重要性を認識し始めているのでしょう? マルチSoC(System on Chip)プロジェクトを推進する企業にとってはインターコネクトがSoCの開発生産性におけるキーファクターなのでしょうか? これらの買収は、インターコネクトの開発が時間とコストを要する上に極めて難しいものであることを踏まえた上での一つの答えなのでしょうか?
最近の業界再編の動きを見て、インターコネクトのDIY(Do-It-Yourself、自社開発)を検討すべきだろうかと考えている企業もあるかもしれません。それが単純なクロスバースイッチであろうと、高性能SoC向けの包括的ネットワークオンチップ(NoC)アーキテクチャであろうと、確保しなくてはならないものは適切な知識を持った適切な人員と十分な予算です。ですからいずれはそういうことも起こり得るかもしれません。しかし問題はそれが「実現可能かどうか」ではなく、「本当にそうすべきなのか?」ということです。
図1:自動運転車の機能安全といった最先端の問題にすでに取り組んでいる実績あるプロバイダーからNoC IPのライセンスを取得することが、適切なフィーチャ、ドキュメンテーション、トレーサビリティに基づく製品化期間の短縮につながる (クリックで拡大) 出典:Arteris IP、Arm
SoCアプリケーションで求められることは目まぐるしく変わっていくためインターコネクトを介して速やかに対処する必要があるわけですが、自社開発インターコネクトが「ユーザーフレンドリー」であることを意図して開発されていることはまずありません。莫大な開発費用がかかることを考えれば、年に1種類のチップしか作らないのでは恐らく元が取れません。大半の設計チームは、迅速に派生チップを作成することによって1つの設計を複数の市場やユースケースに応用できるようにするプラットフォームアプローチを採用しています。そして、これら派生チップの作成において鍵を握るのがインターコネクトです。世界クラスのインターコネクトIPがなければ新たなチップ要件への適合に時間がかかり、企業の市場対応力が著しく制約されます。
もう一つ考慮に入れておくべき重要な点は、電力、レイテンシー、帯域幅、データパス、セキュリティといったパラメーターのすべてを最適化しなくてはならないことを踏まえれば、インターコネクトの構築は必然的に極めて難しい作業になるということです。したがって当然ながら、インターコネクトIPの作成には高度な専門知識が必要とされます。インターコネクト開発は、検証と品質に細心の注意を払いながら、アーキテクチャ、ハードウェア、ソフトウェア開発の専門知識を密接に組み合わせていくことが要求されるチームスポーツのようなものです。要するに、ほぼ全てのSoCにも対応できるくらいにスケーラブルなコンフィグラブルインターコネクトIP製品を作ることは、もはや技術の域を越えた「アート」であり、しかも今やそれがクリティカルアート(既存の考えにとらわれない問題提議と解決を追求するアート)になりつつあるということです。
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