顔認識技術の不都合な真実:EE Exclusive(1/3 ページ)
監視カメラが導入される分野は、顔認識を行うAI(人工知能)技術の進化に伴い、幅広くなっている。一方で、防犯が目的だとしても、プライバシー保護に対する懸念の声や、使用について規制を求める声は高まるばかりだ。先進国の中でも、カメラを使った“監視”が最も厳しい国の一つとされる英国の例を取り上げ、顔認識活用の現状と課題に触れる。
この記事は、2019年7月12日発行の「EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版7月号」に掲載している記事を転載したものです。
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顔認証の実証実験が進む英国
英国は、さまざまな小売店やバスの中、個人宅など、至る所にCCTV(閉回路テレビ)カメラが設置されるなど、世界で最も厳しい監視下に置かれている国の一つだ。ここ数年の間に、ニューラルネットワークなどのAI(人工知能)技術によって、大規模な自動顔認証技術が進化を遂げてきた。AIと、英国の既存のCCTVカメラによる大規模ネットワークとを組み合わせることで、セキュリティアプリケーション向けに大きな可能性が広がると期待されている。
しかし、プライバシーに関する懸念がある。写真やCCTVの映像などから収集された生体顔認証データは、個人が知らないうちに、同意なしで撮影されたものであることから、特に問題視されている。こうしたデータは、対象人物がブラックリスト(警戒リスト)に載っているかどうかに関係なく無差別に収集されており、個人の居場所を特定して、その行動を追跡することなども可能になる。また、群衆の写真に写っている全ての人の顔を、個人識別情報に関連付けることにより、個人に関するあらゆる種類のデータと結び付けることが可能になるということも、容易に想像できるだろう。
もし、プライバシーと引き換えに、セキュリティの向上を実現しようとするなら、そのメリットの方がコストを上回る必要がある。顔認証技術は実際に、犯罪者を捕まえる上で効果的だといえるのだろうか。
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