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窒素注入で低抵抗を実現したトレンチ型SiC-MOSFET三菱電機が開発(1/2 ページ)

三菱電機は2019年9月30日、パワー半導体素子として、独自の電界緩和構造を採用したトレンチ型SiC-MOSFETを開発したと発表した。耐圧1500V以上を確保しつつ、素子抵抗率において、従来のプレーナー型SiC-MOSFETに比べて約50%減となる1cm2当たり1.84mΩを実現したという。

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 三菱電機は2019年9月30日、パワー半導体素子として、独自の電界緩和構造を採用したトレンチ型SiC-MOSFETを開発したと発表した。耐圧1500V以上を確保しつつ、素子抵抗率において、従来のプレーナー型SiC-MOSFETに比べて約50%減となる1cm2当たり1.84mΩを実現したという。三菱電機は「世界最高レベル」と主張する。これにより、パワーエレクトロニクス機器のさらなる高効率化と小型化に貢献できると同社は強調する。

 従来のプレーナー型では、ゲート電極をSiCの上に配置するが、トレンチ型ではSiCに「溝(トレンチ)」を形成し、そこにゲート電極を配置する。これによって、プレーナー型よりもトランジスタセルの幅を狭められ、より高密度に集積ができ、素子抵抗も低減できる。Si-MOSFETでは既に量産製品に用いられている技術だが、SiC-MOSFETでは一部のメーカーが製品化しているのみで、まだ開発途上にある。


プレーナー型とトレンチ型の違い 出典:三菱電機(クリックで拡大)

 今回開発したトレンチ型のSiC-MOSFETでは、次のブレークスルーポイントがあるという。アルミニウムや窒素などの不純物をトレンチ部に注入して「電界緩和構造」「高濃度層」を形成することと、その注入方法として「斜め注入」を適用したことだ。

ゲート絶縁膜の破壊を防ぐ「電界緩和構造」

 電界緩和構造は、強い電界からゲート絶縁膜を保護するもの。Si-MOSFETに採用されている従来のトレンチ構造では、トレンチの角の部分で強い電界が発生し、ゲート絶縁膜が破壊されるという事象があった。そこで三菱電機はトレンチの底面にアルミニウムを垂直方向に注入して電界緩和層を形成。1500V以上の耐圧性能を維持しつつ、電界強度をプレーナー型並みに低減することに成功したという。

 さらに、「スイッチング動作時に電界緩和層に電荷が蓄積し、スイッチング損失が発生する」という課題にも対応した。具体的にはトレンチの側面部にアルミニウムを注入し、電界緩和層とソース電極をつなぐ「側面接地部」を形成した。これにより、電界緩和層に蓄積した電荷をスムーズにソース電極に流せるようなり、スイッチングの高速動作を維持できるとする。

今回開発したトレンチ型SiC-MOSFETに採用した電界緩和構造 出典:三菱電機(クリックで拡大)

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