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日本の半導体産業は今後どうすべきなのか大山聡の業界スコープ(24)(2/2 ページ)

筆者は仲間とともに半導体設計開発会社を興すに至った。今回は私事で大変、恐縮ではあるが、新会社に対するこだわりについて述べたいと思う。

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残念ながら、日系企業においては……

 しかし残念ながら、日系企業においてこのような動きは見られない。かつて自社システム製品に必要だった半導体の設計/製造技術は「他社から買えばよい、社内に抱える必要はない」という判断で連結から外されたままだ。「差別化戦略強化のために再び半導体事業を取り込もう」という事例が果たしてあるだろうか。一方で分社された半導体メーカー各社は、これまでの豊富な経験や実績があるにも関わらず、ティーチャーカスタマーがいない、収益の柱となるような戦略的製品が育たない、という厳しい状況が継続しているのが現状だろう。明確に「戦略的製品」と言えるのは、キオクシア(旧東芝メモリ)のNAND型フラッシュメモリ、ソニーのイメージセンサーくらいではないだろうか。

 特に日系半導体メーカー各社がDRAMに代わる戦略製品に育てようとしていたSoC、システムLSIに関しては、その具体的なアプリケーションが未だ見えてこない。例えば、ASICによるSoCを主力製品と位置付けている企業も、計画通りの成長を成し遂げているようには見えない。事実、SoC事業の縮小を加速している企業もあるし、先端ASIC事業からの撤退を宣言した企業もある。AppleやGoogleが自社の差別化戦略のためにSoC開発リソースをかき集めている状況とは、極めて対照的なのである。

半導体業界への貢献を目指して


画像はイメージです。

 筆者としては、日本国内でもSoC開発リソースを必要とする有力顧客が増えることを期待しているが、今後の見通しは依然として不透明だ。当面期待できるのは中国をはじめとする海外市場だろう。SoCニーズを持つ顧客候補とSoC開発リソースをマッチングさせることの重要性を強調させていただきたいのである。

 冒頭にご紹介した、「今さら何をはじめるのか」「人材をどうやって集めるのか」「コンサル業務と2足のわらじを履くのか」という質問に対する回答にはなっておらず恐縮だが、われわれの新会社はこのような半導体業界への貢献を目指し設立される。SoC開発ニーズを持つ顧客候補については具体的に認識しているので、開発リソースをどのように招集するか、あるいはリソースを持つ企業や組織とどのように連携するか、が最大のポイントとなるだろう。日本国内に多く存在するSoC開発リソース、人材を十分に活用し、再び世界の半導体産業におけるリーダーの一角を占めるために汗をかかせていただきたい、との熱い想いがわれわれ新会社のメンバーで共有されている。

 否定的、懐疑的なご意見を持たれる方々は多いと思うが、中にはご賛同いただける方々もおられるのではないだろうか。もし「一緒にやってみたい」というご意見をお持ちの方がおられれば、末尾の筆者プロフィールから「グロスバーグ合同会社」の文字列をクリックして弊社Webサイトにアクセスいただき、「Contact」サイトからお問い合わせいただければ幸いである。

筆者プロフィール

大山 聡(おおやま さとる)グロスバーグ合同会社 代表

 慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。

 1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。

 2010年にアイサプライ(現IHS Markit Technology)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。

 2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。


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