2020年の市況を占う ―― WSTS、SEMIの予測は保守的すぎる!?:大山聡の業界スコープ(25)(1/2 ページ)
2020年はどんな年になりそうなのか。半導体デバイス、半導体製造装置業界の2020年見通しについて考えてみたい。
本連載の前回記事で「日本の半導体産業は今後どうすべきなのか」と題し、新会社設立へのこだわりについて述べたところ、予想を上回る反響をいただき、弊社Webサイトへのアクセスも多数いただいた。非常にありがたい現象に感謝しつつ、大変勇気づけられると同時に、責任の大きさ、重さをも痛感している。2020年は筆者にとって今まで以上に大事な年となりそうで、気を引き締めていきたいと思う。では客観的に見て、2020年はどんな年になりそうなのか。自身のことだけではなく、全体的な見通しについて考えてみたい。
2020年はもっと大きな成長が期待できる
まずは半導体市場の見通しについて。WSTS(世界半導体市場統計)の予測(2019年12月発表)によれば、2019年の金額ベースの成長率が前年比12.8%減、2020年が同5.9%増とのことである。2019年の見通しについて異存はないが、2020年の予測はとても同意できる数字ではない。2020年はもっと大きな成長が期待できると筆者は考えている。
上表はWSTSが発表した半導体予測で、ディスクリート、光半導体、センサーの2020年予測にはおおむね賛同できるものの、トータルICの予測(=5.2%増)には強い違和感がある。この辺りについて、もう少し詳細に見てみたい。
ICはアナログ、マイクロ、ロジック、メモリに類別され、このうちのメモリ市場をどう見るかによって全体像は大きく変わってくる。上表からも分かる通り、同市場は他の市場とは比較にならないほど変動幅が大きいからである。
上図はメモリ市場の動向をグラフ化したもので、2019年12月以降はGrossbergの予測である。過去の実績を見ると、ほぼ4年を周期にサイクルを形成しており、2019年はボトム期にあったことが分かる。
しかしNAND型フラッシュメモリは2019年8月下旬に大口価格が若干ながら上昇し、今後の回復を期待できる局面になった。DRAM市場はまだ予断を許さないが、スポット価格の下落が収束しつつある。いずれにしろNANDフラッシュにとっても、DRAMにとっても、最大のアプリケーションであるスマホ市場が回復しつつあることがポイントで、DRAM市況の好転も時間の問題だろう。単価下落が収束したメモリ市場は、ビット需要の伸びがそのまま金額ベースの成長につながる。この状況下で「前年比4.1%増」などという予測には到底賛同できない。同30〜50%増という高い成長が見込める、と筆者は考えており、上図のような急速な回復を予測している。
メモリ市場が同40%前後の成長が見込める前提であれば、2020年の半導体市場は同20%を上回る成長が期待できるだろう。実際にTSMC、Intelに引き続き、Samsung Electronicsが好況に対応すべく、積極的な設備投資に動いている。
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