「CES 2020」で感じた10の所感:膨大な取材を終えて(3/4 ページ)
膨大な数の記者会見やインタビューが行われた「CES 2020」。CESでの取材を終えて筆者が感じた「10の所感」をまとめる。
6. ちょっとずぶとい? 自動運転
MobileyeのCEOであるAmnon Shashua氏は、自動運転車(AV)の交通障害(不規則に道路に停められた自動車など)への対処や対向車のナビゲートに関する映像を披露した。安全な距離を維持しようとしている自動運転車が、身動きが取れなくなるが、そこから抜け出す方法を見つけるというものだ。交通量の多い交差点で左折しようとしている自動運転車の前に、突然、それを遮るように曲がる連結バスが現れる。その他にも、別の自動車や歩行者などが次々と現れるが、Mobileyeのチップを搭載した自動運転車は、「曲がろう」とする一定レベルの自己主張(ずぶとさと言ってもいいかもしれない)を示していた。
7. なぜわれわれは自動運転を開発するのか
Infineon Technologiesの自動車部門の責任者であるPeter Schiefer氏は、一般向けの完全な自動運転車の本格的な登場は、恐らく2030年まで待たなければならないだろうと述べた。
高度な自動運転車について保守的な見方をすることで知られている車載チップメーカーにも、それぞれの考えがあるようだ。NVIDIAはCES 2020では記者会見をしなかった。同社のCEOであるJensen Huang氏のプレゼンテーションがなければ、メディアは、AIの驚くべき進歩についても、驚異的な処理性能を実現したGPUコアを統合したSoC(System on Chip)についても、自動運転車の試作車における同社のデザインウィンについても、書くべきことは少なかった。
それとは対照的に、Texas Instruments(TI)のプロセッサ事業部門のゼネラルマネジャーであるSameer Wasson氏は思慮深いアプローチをとった。自動運転車について尋ねると同氏は「なぜ、自動運転車向けのチップ開発をしているのか、自分自身に問いかける必要があるだろう」と答えた。
例えばUberは、人間のドライバーを置き換えるために自動運転車の開発を行っている。高性能なプロセッサを手掛ける半導体メーカー各社は、AIを推進すべく新しいコンピューティングアーキテクチャに取り組む機会を模索し続けている。
だが、TIにとっての答えは簡単かつ明確だ。より高度な安全機能によって実現される、実用的なクルマの開発に貢献することである。
Wasson氏は次のように述べている。「われわれのミッションは、1)できるだけ多くの人が使えるような、高度な自動化機能を開発すること、2)自動車メーカーが必要とするシステムから学ぶこと、3)スケーラブルなソリューションによって、少なくとも15年以上にわたる製品サイクルを効率的に管理すること、という3つである」(同氏)
TIは今回のCESで、同社の最新の「Jacinto」プラットフォームをベースとした、ADAS(先進運転支援システム)向けプロセッサ「TDA4VM」を発表した。
8. 自らの意思を伝える自動運転?
Qualcommは、同社のチップを搭載した自動運転の試作車を用意し、報道機関や顧客が試乗した。
この試作車に乗車した、米国の市場調査会社Tirias Researchの主席アナリストを務めるJim McGregor氏は、「試乗会はラスベガスの高速道路で行われた。合流やナビゲーションはスムーズで、Chevrolet Camaro(シボレー カマロ)が私たちの前に割り込んできて危うくスピンしそうになったが、これもうまく回避した。総合的に見て乗り心地は快適で、システムは非常に円滑に動作しているように思えた」とEE Timesに語った。
Qualcommの試作車には、乗客に「右車線に合流します」など、これから行う動作を音声で知らせる新しい機能が搭載されている。AIがなぜその決断をしたのかを人間に説明できるようになるのは、かなり先になりそうだが、次に何をするかを乗客に知らせることは良いアイデアであり、現時点の技術で可能だということを示した。
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