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パンデミック後の半導体製造、ボトルネックになるのは日本なのか湯之上隆のナノフォーカス(23)(1/6 ページ)

ついに「パンデミック宣言」が出た新型コロナウイルス(COVID-19)の猛威は続き、さまざまな業界に影響が及んでいる。製造業/半導体業界は今後、どのような局面を迎えるのか。実は、終息のメドが立った際、最も早く立ち直るべきは日本なのである。

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ついに「パンデミック宣言」が出たCOVID-19


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 東日本大震災から9年が経過したことし(2020年)3月11日、世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長が世界中で感染が拡大している新型コロナウイルス(COVID-19)について、「パンデミック(世界的な大流行)とみなせる」と表明した(日経新聞3月12日)。

 人類はこの危機を乗り越えることができるのだろうか? また各国で株価が暴落し続けている世界経済は、今後一体どうなってしまうのだろうか? 2020年初頭には、こんな事態になるとは全く予測できなかった。まさに“一寸先は闇”である。

 しかし嘆いてばかりいてもいられない。筆者の仕事は、このような危機的状況の中で、世界半導体産業が今後どのような局面を迎えるかを分析し、関係者に注意を喚起することであろう。ならば、手探りしてでも、その仕事をしてみようではないか。


図1:『東アジア優位産業』(中央経済社)、2020年3月11日出版 (クリックで拡大)

 ところで、筆者にとって2020年3月11日には、もう一つ別の意味がある。この日は、京都大学・大学院経済学研究科の塩地洋教授と田中彰教授が中心となって、合計16人の先生が2年がかりで準備を進めてきた『東アジア優位産業』(中央経済社)が出版された日でもあるのだ(図1)。筆者は、「第13章 半導体 メモリメーカーの飛躍的成長と中国の台頭」の章を分担執筆した。

 中国、韓国、台湾、日本を「東アジア」と定義すると、東アジアには特徴的に強い産業が多数ある。例えば、自動車やその部品、鉄鋼、液晶テレビやパネル、携帯電話やスマートフォン、そして半導体などである。これらをまとめたものが上記の書籍である。

 本稿では、まず、上記書籍で筆者が主張した「世界の中で東アジアが半導体製造の中心となっている」ことを論じる。次に、東アジアの各地域がどのような役割を果たしているかを述べる。さらに、東アジアの4カ国が新型コロナウイルスの感染において、それぞれどのような局面を迎えているかを明らかにする。

 その上で、今後の世界の半導体製造においては、日本の感染拡大がいつ終息するかが極めて重要であることを導く。結論は、日本の終息が長引いた場合、日本が世界の半導体製造のボトルネックになる可能性があるということになる。何としても、コロナ騒動を終息させなくてはならない。

「メーカー基準」における東アジアの半導体生産高シェア

 ある製品がどこで作られたかを分析する場合、「メーカー基準」と「生産国基準」の二つの指標がある。「メーカー基準」では、複数国に工場があっても、本社がある国にその製品の生産高がカウントされる。一方、「生産国基準」では、文字通り、その国で生産された製品の生産高を集計する。

 図2は、「メーカー基準」を採用した場合の地域別半導体の生産高シェアの推移である。この図を解釈する前に、次の注意が必要になる。


図2:地域別半導体生産高のシェア(〜2017年) 出典:2010年まではガートナーのデータ、2011年以降は筆者の調査による(クリックで拡大)

 半導体メーカーには、設計から製造まで全てを1社で行う垂直統合型(Integrated Device Manufacturer、IDM)、設計だけを行うファブレス、製造に特化したファウンドリーなどの形態がある。

 IDMの生産高は、半導体工場が多国籍に分散していても、本社が存在する国にカウントされる。一方、米国のBroadcom、Qualcomm、NVIDIAや中国のHuaweiなどのファブレスが設計した半導体は、台湾のTSMCが製造しているが、これらの半導体は、ファブレスがある国の生産高と計算される。従って、図2には、TSMCなどファウンドリーの寄与分は考慮されていない。

 あらためて図2を見てみると、1980年代中旬に、日本が米国を抜いて50%を超える世界シェアを持つに至ったが、1995年に米国に抜き返され、その後シェアの低下が止まらない。2017年には、わずか7%にまで減少してしまった。

 一方、日本を除くアジアの半導体シェアは、2001年以降に増大し始め、2017年には38%になった。日本を含めたアジアのシェアは45%となり、1位の米国に迫る勢いである。これは主として、Samsung Electronics(以下、Samsung)やSK hynixなど韓国のメモリメーカーの寄与が大きいと考えられる。

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