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インタビュー

「学会に行って満足」は時代遅れ、米国VCが伝えたいこと日本は伸びしろがあるのにもったいない(2/4 ページ)

米国のベンチャーキャピタル(VC)Pegasus Tech Venturesの創設者兼CEOを務めるAnis Uzzaman(アニス・ウッザマン)氏は、日本に留学していたこともある人物だ。世界中のさまざまなスタートアップを知るUzzaman氏は、日本のスタートアップの実力、そしてスタートアップ投資に対する日本企業の姿勢をどう見ているのだろうか。

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“居酒屋”に行く!? 何をしていいか分からない大手企業

――日本企業は、スタートアップへの投資に興味を持っていますか?

Uzzaman氏 実は今、日本でCVCがかなりのブームになっている。特に大手企業では、新規事業開拓やオープンイノベーションが重要なテーマになっていて、スタートアップへの投資にも関心はあるが、何から始めていいか分からずに頭を抱えていることが多い。

 しかも、われわれのようなVCを経由してファンドを設立し、戦略的な投資を行って国内外のベンチャー企業とコネクションを持つというアプローチを知らない事業会社も多い。

――自分たちで全てやらなくてはいけないと、思っているんですね。

Uzzaman氏 だから、上司に「取りあえずシリコンバレーに行ってこい」と指示されて、シリコンバレーに来たはいいが、結局何をしていいか分からず、現地の居酒屋に行ってしまうという人もいる。

――え! 居酒屋!? 居酒屋って、お酒を飲む、あの居酒屋ですよね?

Uzzaman氏 そう、その居酒屋です。それで居酒屋のオーナーに「どこかいい所(いいスタートアップ)、知りませんか?」と聞いてしまう。でも、居酒屋のオーナーにしてみれば、「いや〜、オレ、ラーメン屋なら紹介できるんだけど……」くらいしか言えない(笑)。

――それはそうですよ(笑)。でも、そのくらい何をしていいのか分からない、ということですね。

日本は、もっと“しつこい”くらいがちょうどいい

――日本のスタートアップには、どのような印象を持っていますか。

Uzzaman氏 質が高いと感じている。Pegasusは現在、金融系サービスを展開するスタートアップ(Money Forward、お金のデザイン、ZUUなど)や、テラモーターズ、モンスター・ラボといった、テクノロジー系、IT系まで、日本のスタートアップに幅広く投資している。技術系のベンチャーは、世界的に見るとまだまだ少ないが、質はいい。Pegasusは2020年に、100億円を日本のベンチャーに投資する予定だ。

――日本でも、シェアオフィスが増えるなど、ベンチャーが活動を続けやすい環境が整ってきたように感じています。

Uzzaman氏 当社は2012年から日本のベンチャーに投資しているが、3〜5年前と比べると、ベンチャーに対する意識や、ベンチャーに関するエコシステムがだいぶ育ってきたように思う。ただし、それは東京の話だ。地方では、まだ環境が整っていないのが現状だ。

 そして、世界的に見ると、かなり遅れている。東アジアで言えば、中国や韓国に比べて圧倒的に遅れている。遅れているというより、とにかくベンチャーの数が少ない。特に韓国は、人口比で見るとスタートアップの数がかなり多い。2020年1月に米国ネバダ州ラスベガスで行われた「CES 2020」でも、日本のベンチャーは50社くらいだったが、韓国は300社以上、出展していた。

 特に、中国、韓国、イスラエル、フランス。この4カ国は、イノベーションが成功の鍵を握っていることをよく分かっていて、国を挙げてベンチャーを支援している。

――日本でも、内閣府、経済産業省、文部科学省などがプロジェクトを作って一生懸命に取り組んでいますよね。それでも他国とこれほど大きな差があるのは、何かが足りないのでしょうか。どうお考えですか?

Uzzaman氏 足りないことは幾つかあると思う。まずは、国内だけでなく国外のVCや投資家を使うことだ。残念ながら、現時点では日本に投資している外国人投資家は少ない。日本への投資に最も活発なのは、われわれしかいないのではないか。

 原因の一つは、日本の素晴らしい投資環境が、外国人投資家に知られていないことだと思う。これは、(日本を1つの会社に見立てて)“Japan Inc.”の広報活動が、外国人投資家たちに対して全くできていないということ。政府は、きちんと日本の投資環境を宣伝する必要がある。投資家たちを日本に連れてきて、英語でしっかり説明し、日本にはこんなスタートアップがあるのだと紹介する。そういう活動が、ない。

 対照的なのが韓国だ。韓国では、例えばKOTRA(大韓貿易投資振興公社)が毎年数回ベンチャーを紹介するイベントを韓国で開催している。KOTRAの担当者はシリコンバレー中のVCに何度も何度も電話をかけて、イベントに来てくれないかと依頼する。私のところにも20回ほど電話がかかってきた。

 そうなるとこちらも、「それほど熱心に誘ってくれるなら、行ってみようか」という気持ちになる。行けば行ったで、VCが手ぶらで帰ってくることはまずない。必ず何らかの収穫を得て、シリコンバレーに戻ってくる。目を付けたベンチャーのアドバイザーになって帰ってくる者もいるほどだ。そこから付き合いが始まり、米国で活躍している韓国ベンチャーも少なくない。さらに、Pegasus主催のスタートアップイベントには、今度はKOTRAの担当者が来るなど、ギブ&テイクやフォローアップの姿勢も忘れない。

――そういった粘り強さが、日本には、まだ足りないということですね。

Uzzaman氏 やはり、そういった熱意は投資家には伝わるものだ。

 あとは、私のような人間をうまく使ってほしい。私は、日本のスタートアップに最も投資して、成功している外国人投資家の1人だと自負している。日本に投資を始めてからの7年間で、7社のスタートアップのIPO(新規上場)を実現させた。

 だから、例えば米国かどこかで、投資家向けに日本市場を紹介するイベントを開催し、私が日本での成功事例を共有さえすれば、他の外国人投資家たちの目も日本市場に向くはずだ。だが、一度も政府から講演を依頼されたことはない。

――それはもったいない……。アニスさんとしては、依頼されればいくらでも話すというスタンスなのですよね?

Uzzaman氏 もちろん、そうだ。私のような登壇者が1人でもいれば十分なのだから。

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