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28GHz帯を用いロケットの推力をワイヤレス給電伝送距離900mmで送受電効率14%

筑波大学の研究グループは、マイクロ波を用いたワイヤレス給電によってロケットの推力を生成し、この時の総合推進効率を詳細に測定した。

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ロケットへの搭載燃料をほぼ「ゼロ」に

 筑波大学システム情報系の嶋村耕平助教と同プラズマ研究センターの假家強准教授らによる研究グループは2020年4月、マイクロ波を用いたワイヤレス給電によってロケットの推力を生成し、この時の総合推進効率を詳細に測定したと発表した。

 マイクロ波ロケットは、化学燃料を用いずにロケットを飛ばすことができる。このため、搭載燃料はほぼ「ゼロ」となり、打ち上げコストを従来の100分の1に削減することができるという。

 このため、マイクロ波ロケットを効率よく設計する手法や、マイクロ波から推力を生成するメカニズムの研究などが進んでいる。マイクロ波を用いたワイヤレス給電についても研究が始まっているが、給電効率を直接測定することはこれまで難しかったという。

 研究グループは今回、5G(第五世代移動通信)に用いられる周波数28GHzの電磁波(マイクロ波)を用い、電子レンジの約500倍に相当する250kWの出力で、ロケットの推力を生成した。

 具体的には、プラズマ研究センターが所有するマイクロ波源の「500kW級ジャイロトロン」を用い、直径が200mmで長さ600mmの円柱型推進機に向けて、マイクロ波を照射した。整流器とアンテナで構成された独自の「レクテナ回路」を用いることで、ロケット内部のマイクロ波を計測することが可能となり、ワイヤレス給電の効率を算出した。

 この結果、推進機の中心電力密度13.9MW/m2に対し、推進機への投入電力は35.2kWとなった。これにより、900mmの送電距離で推進機と送電アンテナ間の送受電効率は14%、コンセントからロケットまでの効率は約6%であることが定量的に分かった。


上図は電波シールドルーム内でのマイクロ波ロケット推力測定実験と使用したマイクロ波ロケットの外観、下図は推力測定実験の模式図と測定結果 出典:筑波大学

 マイクロ波ロケットは、電離層の影響を受けない高度100kmまで加速しきることが想定されている。研究グループによれば、ロケットの姿勢や位置が刻々と変化する中で、いかに効率よくマイクロ波をワイヤレス給電できるかが課題になるという。

 実験では、位置や姿勢を特定し、地上から1m離れたドローンにマイクロ波を送り給電した。現在はマイクロ波によるワイヤレス給電の電力のみでドローンを飛ばすことはできないという。今後は、マイクロ波ロケットの実現に向けて、送電距離や電力を増やしていく考えである。

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