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量子コンピュータよ、もっと私に“ワクワク”を踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(2)量子コンピュータ(2)(2/9 ページ)

この連載のために量子コンピュータについて勉強し続けていますが、今一つワクワクしません。ハードがないのにアルゴリズムの研究が何十年も行われているのは素直にすごいと思いますが、ことアプリケーションの話になると、どうも“ショボい”気がするのです。そうは言っても、連載を続けないといけませんので、「私の、私による、私が楽しむためだけの記事」として筆を進めることと致します。

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空想上のハードだけでアルゴリズムの研究は続いてきた

 さて、今回の「量子コンピュータ」を、Googleトレンドで調べた結果は、こんな感じでした。

 量子コンピュータの起源は古く、1980年代にさかのぼります。ただ、それらは量子コンピュータの可能性を論じているものでした。量子コンピュータは、モノ(ハードウェア)が存在しないのに、ロジックやアルゴリズムが先行的に提案され続けていました。

 「実際の量子コンピュータが、モノになりそうだ」と世間に確信させたのは、その30年後の2011年のカナダの企業D-Wave Systems社の「D-Wave」でした(ただし、次回以降にお話しますが、これは量子ゲートではなく量子アニーリングでした)。IBM, Google等が、それに続き現在の状況に至っています。

 ここで特筆すべきことは、頭の中にある空想上の量子コンピュータだけで、30年近くもアルゴリズムの研究が続けられてきた、という事実です ―― 私の正直な感想は「よく続けられたものだ」ということで、もっと生々しい言葉で表現するなら「よく予算が付いたものだ」ということです*)

*)[Tさんツッコミ!]量子力学に基づいて情報理論を構築する「量子情報理論」という学術分野が30年前に確立されて、現在に至っているようです。


 これについては、別の連載記事「困惑する人工知能 〜1秒間の演算の説明に100年かかる!?」の、「"納豆御飯ともやし炒め"を、毎日おいしく食べ続けられる人間だけが、真のAI研究者足りえる」をご参照ください。

 ただ、この「量子コンピュータ」は、どうも、他のバズワードとは、異なる傾向が見られます。最近2回ほどピークが観測されていますが、それ以外においては比較的安定して登場し続けています。

 これは仮説ですが、「量子コンピュータ」はバズワードの成立要件を満たせていないのではないか、とも考えています。"ロングテール"やら"ユビキタス"などとは異なり、内容が難しすぎて「分かったような気にすらなれない」、そして、「分かったような気になれないもので騒ぐのは難しい」ということです。

 しかし、ここで一つの疑問が生じます。それは「AI」に対する世間の狂い方です。私の知り得る限り、「AI」だけは、「その技術的な理解をさぼっても良い」という社会的合意を獲得した、例外的なバズワードです。

 実際のところ、世間も、本当は「AI」がバズワードであることを知っていたように思えます。なぜなら、今回の新型コロナウイルス災禍において、私は、「"AI"なるものが何か役に立ったというニュース」も、「"AI"が全く使われていないことに憤っている人」も、見つけることができなかったからです。

 要するに、大半の人が、「AI」なるものに何も期待していなかったのです。ちょっと肩透かしを喰らった気分です。ちなみに私は、「東京都が管理するAIによる緊急自体宣言発令の提案」というニュースの登場をずっと待っており、即座に「ツッコみを入れる」準備もしていました(本当)。

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