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日本中小企業のAI導入加速を狙う、ジルファルコンシリコンバレー発AIスタートアップ(1/3 ページ)

IoT(モノのインターネット)市場の拡大などによってエッジAI(人工知能)へのニーズが急速に高まる中、独自の用途特化型アーキテクチャ(Domain Specific Archtechrure:DSA)を武器としたスタートアップ企業が勢いを増している――。今回、AIアクセラレーターを手掛ける米国シリコンバレー発スタートアップGyrfalcon Technology(以下、Gyrfalcon)の日本法人代表に、同社の技術や日本市場での狙いなどを聞いた。

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ジルファルコン・テクノロジー・ジャパン代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)の西口泰夫氏 提供:Gyrfalcon Technology

 IoT(モノのインターネット)市場の拡大によってエッジAI(人工知能)へのニーズが急速に高まる中、独自の用途特化型アーキテクチャ(Domain Specific Archtechrure:DSA)を武器としたスタートアップ企業が勢いを増している――。米国シリコンバレー発スタートアップGyrfalcon Technology(以下、Gyrfalcon)もその1社だ。同社は主に画像処理に利用されるCNN(畳み込みニューラルネットワーク)に特化した低消費電力、高速処理のAIアクセラレーターを手掛ける企業で、2017年設立でありながら、既に世界大手メーカーのスマートフォンにも製品が採用されるなど高い評価を得ている。

 同社は2019年1月、京都に日本法人を設立、2020年2月には東京に営業/技術サポート拠点を設置するなど日本展開も急加速している。今回、日本法人ジルファルコン・テクノロジー・ジャパン代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)の西口泰夫氏に、同社の技術や日本市場での狙いなどを聞いた。

ミッドレンジスマホに搭載できるエッジAI

 Gyrfalconは2017年、米国カリフォルニア州シリコンバレーの起業家とAIサイエンティストらが設立したスタートアップだ。それぞれがメモリを備える処理ブロックを2次元に配置する独自アーキテクチャ「Matrix Prosessing Engine(MPE)」をコア技術とし、これによって低消費電力、かつ高速処理を実現したAIアクセラレーター「Lightspeeurシリーズ」を2018年から提供している。

 低消費電力、高速処理に加え、小型、低コストといった特長も持つことからスマートフォンや家電をはじめとした機器へ組み込むエッジAIとして高く評価されており、2019年にはLG Electronicsのミッドレンジスマートフォン「Q70」に搭載されるなど多くの実績も積み上げている。なお、Q70では“ボケ”などのカメラエフェクトの推論処理に使われているという。

 このスタートアップ企業からオファーを受け2018年に役員として加わったのが、京セラの代表取締役社長、同社代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)、そしてソシオネクスト代表取締役会長などを歴任してきた西口氏だ。日本法人ジルファルコン・テクノロジー・ジャパンは、西口氏が主導し2019年1月に設立したといい、翌年2020年2月には東京に拠点を開設するなど、日本国内での事業を一気に加速している。

CNN特化型のAIアクセラレーター

――まず、Gyrfalconのコア技術について。

 西口氏 われわれの技術は、CNNに特化したDSAとして開発し、大きな差異化を図っている。一般的なCPUの処理は「スカラー型」と呼ばれ、1つのデータを直線的に順を追って処理していくものだ。一方、NVIDIAのGPUなどでは、「ベクター型」と呼ばれる、並列処理を行っている。これら従来のものとは全く異なる独自のアーキテクチャが、われわれのMPEだ。

 MPEでは、Gyrfalconの特許技術である「AIPiM(AI Processing In Memory)」を用い、CNNの処理をチップ内部で完結している。それぞれメモリを内蔵した各プロセッシングエンジンを2次元に配置するもので、従来なら必要となる「推論を行う部分とメモリ間でのデータ移動」が不要になることから高い効率を実現し、消費電力を大きく抑えるとともにCNNの超高速処理を可能にした。これは、人間が脳を用いて推論する方法に近い形をとっているといえるだろう。


Gyrfalcon のマトリックス処理エンジン(MPE)について。APiMはパラメーターメモリとALUメモリ、ALU、データフローコントロールで構成。28000以上のAPiMを2次元に配置し、データフローを最適化および高速化している(クリックで拡大) 出典:Gyrfalcon Technology

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