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“DX”に過剰反応するのは日本だけ?大山聡の業界スコープ(30)(1/2 ページ)

新型コロナウイルス感染拡大を受けて日本国内でDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みが活発化している。今回はこのDX対応について焦点を当ててみたい。

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 東京都は2020年6月11日、新型コロナウイルス感染拡大への警戒を呼び掛ける「東京アラート」を解除した。さらに休業要請の緩和行程を3段階で示したロードマップに基づき、同月12日午前0時にステップ3へ移行した。しかし国内でも「秋冬には第2波到来は確実」と言われており、世界ではまだ感染者数が増加傾向にある。そのような中、われわれは当面の間このウイルスと付き合い続けねばならないようで、今後の仕事や生活のあるべき姿についてさまざまな議論が行われている。例えば「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が進んでないからテレワークがやりにくかったという声もあり、これをキッカケにDX対応を頑張ろう、という動きもあるようだ。今回はこの辺りに焦点を当ててみたい。

Web会議がもたらしたもの

 筆者は元々、自宅の片隅が仕事場なので、非常事態宣言だろうが東京アラートだろうが、職場環境はそのままである。しかし、顧客や取材先の皆さんから「われわれも出社していません」「面談は原則禁止です」と言われ、外出せずに電話、メール、Web会議などを多用することになったのは大きな変化だった。かつてはWeb会議と言えばSkypeなどと思っていたものだが、昨今はWebEx、Zoom、Teamsなど選択肢も増え、筆者も自粛期間にさまざまなツールを使わせていただいた。「Zoomでオンライン飲み会」などはメディアやネットでも話題になっていたので、体験された方も多いのではないだろうか。

 個人的な感想を言わせてもらえれば、オンライン飲み会ではやや不完全燃焼気味で、「通常の飲み会のような雰囲気とは違うな」「やっぱり本物の居酒屋の方が良いな」という印象を持った。娯楽の1つである飲み会は「仲間の顔を見ながら飲めれば良い」というものではなく、同じ空間を共有する雰囲気がないと盛り上がらないものなのだろう。

 しかし、仕事上の会議はどうだろうか。娯楽だけでなく、仕事でも「場の雰囲気」が重要視されることは多いが、そもそも会議は、参加者が必要な情報を交換、共有し、理詰めで議論を行い、何らかの結論を出すことが目的である。むしろ「場の雰囲気」を尊重することで議論が不十分に終わるようでは本末転倒だろう。操作に慣れていない、回線が不安定だ、といった課題は無視できないが、筆者としては「これをキッカケにもっとWeb会議を多用しよう」という思いを強くしたものである。元々、海外など遠方の人物との議論が必要な場合は、電話会議やWeb会議を行うのは普通のことで、これを近場の人物との議論にも活用しよう、というだけことなので、筆者に同意していただける方も多いのではないだろうか。

まだまだ途上のDX対応

 ところが、「環境が不十分でWeb会議ができない」「システム管理者が不在で対応できない」といった事例が実際に発生し、Web会議を見送ったケースが何度かあった。筆者は個人経営の立場なので、自分から誘うときはZoomで、相手から誘っていただくときは招待メールを出してもらって、などと1人で勝手に決めている。だが、大企業の場合は、システム管理の部署や担当者が会社の方針に従って社員1人1人の環境を整える必要があるので、社員の多くが一斉にテレワークを始めようとする前に、事前の対応に追われて多忙を極めたケースもあったかもしれない。「弊社はDX対応が遅れているから、テレワークにも支障がある」といったコメントも聞かれた。

 筆者はこのコメントが気になったので、顧客や取材先の何人かにDXの話題を振ってみると、想像していた以上に多くの人がDXに強い関心を持っていた。中には「自分の業務のDX化がミッションになった」という人もいて、今回のリモートワークが各社のDX化を推進するキッカケになったのではないか、などと感じている。

 経産省の定義によれば、そもそもDXとは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化/風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」としている。

 さらに調査会社IDC Japanでは、従来のコンピュータシステムを第1のプラットフォーム、クライアントサーバシステムを第2のプラットフォーム、そして「クラウド」「ビッグデータ」「ソーシャル」「モビリティ」の基盤を活用するのが第3のプラットフォームで、これをDXと位置付けている。

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