ついに解禁された「60GHzレーダー」の可能性を聞く:車載、家電、産機、スマホにも(1/3 ページ)
2020年1月、日本でもついに「60GHzレーダー」が解禁となった。今回、同技術の開発を進めるインフィニオン テクノロジーの担当者がその技術の概要、展望と自社の取り組みを語った。
2020年1月、日本でもついに「60GHzレーダー」が解禁となった。2.14cm(理論値)という高い距離分解能および透過性、環境性といった特性、さらに用途制限も設けられていないこのレーダー技術は、自動車向けや民生機器、産業機器など幅広い用途で活用が期待されている。今回、同技術の開発を進めるインフィニオン テクノロジーズ(以下、インフィニオン)の担当者がその技術の概要、展望と自社の取り組みを語った。
高分解能とレーダーの特性で広がる可能性
60GHzレーダーの具体的な性質だが、まず、レーダーの特性として、「透過性、環境性能」が挙げられる。通常のカメラに使われるイメージセンサーと異なり、電波を使用するレーダーは木やプラスチック、衣類を透過するほか、強い光や暗闇、周囲の温度にも影響を受けにくい特性があるのだ。
そのうえで、今回解禁された「60GHzレーダー」が有する最も大きな特長は2つある。まずは、その高い分解能だ。24GHzレーダーの分解能が75cm(理論値)、車載ADAS(先進運転支援システム)用途で用いられている77GHzレーダーの分解能が15cm(同)、79GHzでも3.75cm(同)なのに対し、7GHzの帯域幅を利用できる60GHzレーダーの分解能は、2.14cm(同)と高分解能を実現するのだ。これによって、例えばクルマの中に人がいる、いないといったセンシングだけでなく、その正確な位置の検知や、近距離であればその手の動きや指を使ったジェスチャーまで認識ができるようになるのだという。
下図は24GHzレーダーのほか、ToF(Time of Flight)センサーおよびMEMSマイクを分解能(縦軸)と検知可能な距離(横軸)でまとめたものだ。MEMSマイクは複数使用することで音声の方向や場所を特定できるが、分解能は数メートルにとどまり検知可能な距離も3〜5m程度だ。ToFは検知可能な距離は3〜5m程度だが、最も分解能が高い。24GHzレーダーはアンテナ設計によっては100m以上の距離に対応可能だが、前述の通り分解能は比較的低い。60GHzレーダーは近距離で高い分解能を発揮し、5〜10mにも対応できる。
そしてもう1つの特長が、その用途の幅広さだ。例えば77GHz帯や、分解能が比較的高い79GHz帯は欧米では自動車の車外センシング用途にのみ利用が限定されている。これに対して、60GHz帯はワールドワイドで用途制限がないのだ。インフィニオンのパワー&センサーシステムズ(PSS)事業本部部長代理、荒井康之氏は、「自動車はもとより、室内、居住、オフィス、ビルディングといった製品にデバイスを提供できる」とその可能性を強調していた。
こうした理由から60GHzレーダーへのニーズは高まっており世界各国が電波法で対応を進めている。既に米国(FCC)、欧州(ETSI)、中国(CCSA)、韓国(NRRA)で利用可能なほか、日本でも2020年1月の電波法改正によって解禁。電波産業会(ARIB)での技術標準化作業も進んでおり、2020年中にリリースされる見込みだという。
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