銅配線の微細化限界を左右するダマシン技術:福田昭のデバイス通信(285) Intelが語るオンチップの多層配線技術(6)(1/2 ページ)
今回は、配線製造プロセスの基本部分である、配線パターンの形成技術「ダマシン(damascene)技術」と「サブトラクティブ(subtractive)技術」にについて解説する。
配線パターンを形成する2種類のプロセス技術
半導体のデバイス技術と回路技術に関する国際学会「VLSIシンポジウム」では、「ショートコース(Short Course)」と呼ぶ技術講座を開催してきた。2020年6月に開催されたVLSIシンポジウムのショートコースは、3つの共通テーマによる1日がかりの技術講座が設けられていた。その中で「SC1:Future of Scaling for Logic and Memory(ロジックとメモリのスケーリングの将来)」を共通テーマとする講演、「On-Die Interconnect Challenges and Opportunities for Future Technology Nodes(将来の技術ノードに向けたオンダイ相互接続の課題と機会)」が非常に興味深かった。そこで講演の概要を本コラムの第280回からシリーズでお届けしている。講演者はIntelのMauro J. Kobrinsky氏である。
なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
前回から、多層配線の微細化と性能向上を両立させる要素技術を紹介している。前回はIntelが開発した10nm世代の12層金属配線を例に、配線ピッチの極めて狭い層(20nm〜30nmピッチ)とその上の層(40nm〜60nmピッチ)でどのような要素技術が研究されているかを概観した。今回は、配線製造プロセスの基本部分である、配線パターンの形成技術について解説する。
配線パターンの形成技術は大別すると、「ダマシン(damascene)技術」と「サブトラクティブ(subtractive)技術」に分かれる。ダマシン技術は、絶縁膜に配線パターンの溝を形成し、溝に金属膜を埋め込む技術である。日本語では「象嵌(ぞうがん)」、あるいは「象眼(ぞうがん)」とも呼ばれる。サブトラクティブ技術は、金属膜を部分的に除去して配線パターンだけを残し、金属が除去された部分に絶縁膜を形成する技術である。
銅(Cu)配線が普及する以前の半導体製造プロセスでは、アルミニウム(Al)配線と多結晶シリコン(Si)配線が主に使われていた。1990年代前半までは、大規模高性能ロジックもAl配線(アルミ配線)と多結晶Si配線を採用していた。ハイエンドプロセッサに代表される大規模高性能ロジックがアルミ配線から銅(Cu)配線に置き換わるのは、1990年代後半〜2000年代前半のことだ。
銅配線のパターンはダマシン技術で形成する。ダマシン技術は1990年代の当時、まったく新しい配線製造技術だった。当時、アルミ配線と多結晶Si配線のパターン形成には、サブトラクティブ技術が使われていた。
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