車載半導体市場でスタートアップにチャンス到来:既存メーカーとの競争は厳しいが(1/2 ページ)
自動車産業におけるテクノロジー主導の潮流は、半導体のエコシステムを混乱させている。エネルギーシステムやコネクティビソリューション、ADAS(先進運転支援システム)、自動運転システムにおける画期的なイノベーションは、半導体ソリューションのプロバイダーに新たな機会とともに新たな競争圧力を生み出し、車載半導体業界の歴史の中でかつてないほどに競争環境を変化させている。
自動車産業におけるテクノロジー主導の潮流は、半導体のエコシステムを混乱させている。エネルギーシステムやコネクティビソリューション、ADAS(先進運転支援システム)、自動運転システムにおける画期的なイノベーションは、半導体ソリューションのプロバイダーに新たな機会とともに新たな競争圧力を生み出し、車載半導体業界の歴史の中でかつてないほどに競争環境を変化させている。
こうした新たな機会と競争圧力に呼応して、企業の事業形態も変化している。具体的には、大きく以下の3つ分野に分類できる。
- M&Aによる統合
- モバイルやコンピューティングなど他の市場セグメントの半導体ベンダーの参入
- 確立された半導体プレーヤーによって門戸が閉じられていない特定市場やニッチ技術に、より適切に対応できる、全く新しいスタートアップ企業の出現
車載半導体に関わるM&Aの事例
車載半導体業界の“M&Aのルーレット”は、さまざまな結果をもたらしながら、回り続けている。QualcommによるNXP Semiconductors(以下、NXP)の買収は、車載半導体業界のゲームチェンジャーになるはずだったが、失敗に終わった。
現在、車載半導体市場シェア第3位であるルネサス エレクトロニクスは、アナログ/ミックスドシグナル分野の強力なプレーヤーであるIDTを買収。IDTの買収は、ルネサスがIntersilを買収してから1年半もたたずに行われ、同社は車載市場でNXPやInfineon Technologies(以下、Infineon)を脅かす存在になった。その後2019年には、Infineonが同社と同じく幅広い車載製品を提供しているCypress Semiconductorを買収した。
車載市場におけるMaxim Integratedの強さは、Analog Devicesが210億米ドルでMaximを買収する理由の一つである。さらに、最近のNVIDIAによるArmへの400億米ドルという記録的な買収提案は、買収の戦略的根拠としてArmの自動運転車技術の獲得があることは明らかである。もちろん、これら2件の買収が最終的に承認されるかどうかはまだ分からない。
IntelとNVIDIA、Qualcommは、他の垂直市場から車載分野に参入した企業の最も有名な事例だろう。これらの企業は、従来の車載半導体企業がほとんど対応していなかったハイエンドコンピューティングにチャンスを見いだした。だが、これら3社が取った戦略は大きく異なる。
Intelは、Mobileyeの買収に大きく依存することで、ビジョンベースのADASシステムのリーダーになった。NVIDIAは、同社の非常にハイエンドなGPUを活用して、自動運転車に必要なAI(人工知能)プラットフォームを開発している。
一方でQualcommは、車載分野ではまだ、他の2社のような成功や評判を享受していない。Qualcommは、主にセルラー用SoC(System on Chip)でのリーダーシップを、テレマティクスおよび車両通信(C-V2X)分野での足掛かりとしてきた。だが、同社は2020年8月、スウェーデンのティア1サプライヤーであるVeoneerとの協業により、「Snapdragon」プラットフォームが、ADAS分野において手ごわい競争相手となる可能性を業界に示したのである。
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