2050年までの世界半導体市場予測 〜人類の文明が進歩する限り成長は続く:湯之上隆のナノフォーカス(34)(2/4 ページ)
コロナ禍にあっても力強い成長を続ける半導体市場。2050年には、どのくらいの市場規模になっているのだろうか。世界人口の増加と、1人当たりが購入する半導体の金額から予測してみよう。
2010年代前半の世界半導体市場
時計の針を2011年頃に巻き戻す。2008年9月にリーマン・ショックによる世界金融恐慌が起きた。しかし、世界半導体市場はV字回復し、2010年には3000億ドルに到達した(図3)。この時、筆者は、世界半導体市場の推移を3つの時代に区切って理解していた。
(1)〜1995年まで
年率10〜15%で成長してきた時代。日米欧など先進国が半導体市場の成長をけん引した。
(2)1995〜2000年
Windows 95の発売とともに、成長にブレーキがかかった時代。2000年はITバブルにより突出しているが、この年を特異点として無視することにした。
(3)2001年以降
再び、年率5〜7%で成長を始めた時代。図4に示した、地域別半導体市場の推移から明らかなように、日米欧の半導体市場は飽和しているのに対し、アジアの半導体市場が急成長している。この頃、経済発展を遂げ始めた新興国のブラジル、ロシア、インド、中国をBRICsと呼んだ。この中でも、特に中国の経済発展が顕著であったため、中国を含むアジアが世界半導体市場をけん引するようになった。
ここから、先進国と新興国、それぞれで、一人当たり1年間に、どれだけ半導体を消費するかを見積もってみた。
一人当たり1年間の半導体消費量
まず、先進国における一人当たり1年間の半導体消費量を見積もってみた。図3に示した通り、世界半導体市場は1995年にいったん飽和した。2000年のITバブルを特異点として除けば、1995年〜2001年の間は、世界半導体市場は約1500億ドル/年である。
世界人口の推移を見ると、日米欧などの先進国の全人口は約10億人であることが分かる(図5)。この人口は2001年以降もほとんど変わらない(出典:国際連合経済社会情報・政策分析局人口部編纂『国際連合・世界人口予測 2006年改訂版』原書房)。従って、先進国では、1年間に10億人が1500億ドルの半導体を消費していることになる。単純に割り算すれば、先進国では、一人当たり1年間で150ドルの半導体を消費しているといえる(図6)。
例えば、私たち日本人は、PC、携帯電話(今はスマートフォン)、デジタル家電、クルマなどを購入するが、一人当たり1年間で平均150ドル(2010年当時は1ドル88.8円だったため1万3320円)の半導体を購入していた計算になる。皮膚感覚としても何となく合っているような気がしていた。
次に、新興国における一人当たり半導体消費量を計算してみた。世界半導体市場は、2001年から2010年にかけて1500億ドル増大し、約2倍の3000億ドルとなった。このうち、1500億ドルが先進国10億人の消費量、増大した1500億ドルが新興国の消費量と考えることができる。
2010年の世界人口ピラミッド70億人のうち、先進国は10億人、新興国の中間層が20億人といわれていた(図7の右)。残りの40億人は貧困層(Bottom of the Pyramid、BOP)である。
つまり、2010年頃は、新興国の中間層20億人が、1500億ドルの半導体を消費していたことになる。従って、割り算をすると、新興国の中間層は、一人当たり1年間で75ドルの半導体を消費していたと計算できる。これは、先進国の150ドルの半分である。
世界人口ピラミッドの変遷
世界人口予測によれば、2050年には、世界人口は90〜100億人に達する。その時代に、先進国および、新興国の中間層が何人になっているだろうか。
前掲書によれば、2010年以降の10年間で、貧困層の10億人が中間層になり、新興国の中間層5億人が先進国に属するようになるという。すると、2020年には、先進国が15億人に、新興国の中間層が25億人になる。
要するに、10年ごとに、先進国と中間層がそれぞれ5億人ずつ増加する。従って、このような経済発展が続けば、2050年には、先進国は30億人、新興国の中間層は40億人になる(図8の右)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.