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あの医師がエンジニアに寄せた“なんちゃってコロナウイルスが人類を救う”お話世界を「数字」で回してみよう(65)番外編(2/10 ページ)

日本でもいよいよ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が始まりました。収束のメドが立たない現状においてワクチンが“希望の光”であることは確かですが、やはり恐怖心はそう簡単に拭い去れるものではありません。あの“轢断のシバタ先生”から、長文のメールが届いたのはそんな時でした。今回も超大作のそれには、現役医師によるワクチンの考察と分析がつづられていたのです。

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「ワクチン、明日打てるって」……さて、皆さんは打ちますか?

 私(シバタ)の妻は看護師免許を持っており、健診業務に従事しております。先日その妻から「コロナのワクチンって、打った方が良いんだよね?」と質問されました。結論としては私の答えは「即断でYes」でしたが……妻の職場においては、この質問が出てくるまでの経緯には、日本の縮図のような背景があったのです。

 先日始まった新型コロナワクチン接種に先立ち、妻が務める健診事業者の看護師に向けて、ワクチン接種希望の把握のための聞き取りが、今年(2021年)1月上旬から既に始まっていました。

 この集計は、依頼を受けた地域の医師会事務局が中心となって行っていました。とりまとめの看護師さんから妻宛てにグループラインでワクチン接種の意思確認についての文面が届きましたが、同僚の看護師一同、誰も応答しなかったのです。

 その後、業を煮やしたのか取りまとめ役から「1月〇〇日までに返信お願いします」の文面が投稿された直後、それまで沈黙を守っていた看護師たちから一斉に「それでは〇〇日までにお返事させていただきます」という「判断を保留する返信」が怒濤のごとく投稿されたそうです。つまり ――

―― 誰も最初に意見を表明したくなかった

ということです。

 一応は海外における治験でもって効果や副反応の頻度が確認されているといえども、いざ自分の体のこととなると、「できればみんなが打った後がいいなぁ……」「本音は不安で嫌だけど、嫌って言っても良いのかな……」と思うのは、まあ、(日本人なら?)当たり前の心理なのでしょう。医師の中でさえ、「モルモットになるのは嫌だ」と医局で叫んでいる人間が存在するくらいです。

 先日、医療従事者向けの某サイトで厚生労働事務次官の樽見英樹さんの発言が紹介されていました。

 要約としては『新しいタイプのワクチンであることから副反応への対応も重要。従来の安全対策に加え、1万人の医療従事者への投与のその後の情報を集めて副反応、安全性を分析したい』との発言だったそうです(現在は2万人がモニターとして調整されています)。

 医療従事者への先行接種はかねて予定通り(海外に右にならえ)であり、安全性のモニタリングは当然行うべき事項です。ですので、樽見英樹さんの発言は科学的には正解です。

 確かに、見方によっては、先行接種はモルモット扱いです。

 ただ、日本国内で先行接種とは言うものの、これまでに海外で散々接種が行われているわけです。医療従事者4万人の先行接種と2万人の重点経過観察をモルモット扱いと断ずることは大げさと言ってもいいでしょう。

 この問題は、単純に心理的なものです。そもそも、アメリカでは既に大量の日系人が接種者に含まれていますので、鈍感な私としてはまったく問題に感じていません。

 ただ、この心の問題というのは意外と大きいもののようです。特に、初回接種予定者についての話題は同僚の間でもギスギスした空気がつきまとっています。

 例えるなら、「毒味が終わった料理が宴会会場に並んでいます。毒味係からは、『今のところは大丈夫ですが、遅効性の毒についてはご自分で確かめてくださいね?』と伝言がありました。さて、誰が最初に料理に口をつけるでしょうか?」という状態です。

 私は、政治家の先生が「横紙破り」するなら、今でしょう? って思うのです。

 現時点でルール化されている、ワクチン接種の順位 ((1)医療従事者等 → (2)高齢者 → (3)基礎疾患を有する方や高齢者施設などの従事者 → (4)それ以外の方)を守らずに ―― 『国会議員と全国の都道府県首長がワクチン接種開始当日に一斉接種』をこっそりやって、○○砲がその事実をスッパ抜き、国民から囂囂(ごうごう)の非難を浴びる、というくらいのシナリオを描けないものか、と思うのです。

 具体的には、「国会議員がリーダーシップにかこつけて医療従事者より早く自分たちにワクチンを接種するように厚生労働省と密談を行った」というねつ造リーク記事を計画的に報道していただけると、大衆は『そんなに良い物なら我こそ先に』と接種に向かうのではないか、と思います。

 こうすることで、

「優先的にワクチン接種する特権階級への嫉み」>>「リスクへの恐怖」

となり、爆発的に接種希望率が増大すること、間違いなしです。

(江端コメント)
 そして、それは、新型コロナ感染の最前線で闘って、この病気を知り尽している医療従事者の皆さんであっても ―― いや、逆か ―― 医療従事者の皆さんだからこそ、その恐怖は図り知れないとも言えるのです。
 「ワクチン接種しま〜す」と手を挙げた後、後ろを振り向いたら、誰も手を上げていなかったら、そりゃ怖いですよね。

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