【付録】あの医師がもっと伝えておきたい“9個の補足”:世界を「数字」で回してみよう(67)番外編(2/9 ページ)
あの“轢断のシバタ”医師が、コロナワクチンについて伝えておきたい7つのこと。本稿は、その付録となります。
(付録B)変異がもたらすもう一つの大問題の続き
「変異型ウイルスがPCR検査をすり抜ける能力を獲得する可能性がある」という問題についてもう少しだけ書きます。
プライマーとして選ばれる配列は、そのウイルスに特徴的な配列それぞれ連続した20塩基程度ずつが選ばれることが多いです。
ところが、もしもランダムに変異が発生した場合、SARS-CoV-2の全長=約3万塩基のうちの上流下流のプライマー20塩基×ペア=40塩基、つまり40/30000=750分の1の確率で、プライマーがウイルスを認識することが不可能になります。
「机上の空論」「そんなことは確率的にもまず起こるまい」とあなどってはいけません。なんとこれまでに実際に上記のような事例が発生しています。
問題があったのは、米サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック社の「TaqPath」検査キットと、アプライドDNAサイエンシズ社の「Linea」検査キットです。この2つのキットのプライマーが検出する領域が、運悪く変異の部位を直撃していたのです。この変異をもつ株は英国で検出された「B・1・1・7型」とよばれる系統です(参考)。
日本にこの系統が入り込まないとも、日本国内で同じような効果をもたらす変異が発生しないとも、決して言えません。各国、各都市において、検査の感度に影響が出るような変異型が出現しないかどうか、常にモニタリングし続ける必要があるのです。
ちなみに、この変異がワクチンに対する耐性を持っているかどうか、今のところ不明とされています。
PCR検査が絶対的なものでは無いことはこれまでも繰り返し書いてきたつもりです。くれぐれも「ヒャッハー!検査結果陰性だぜ!」などとPCR検査を盲信せず、もしも風邪を引いたら全てコロナだという心構えで、しっかりと身体を休めていただきたいと思います。
そして、「あれ?ホントに風邪かな?」「風邪にしてはだるさがハンパないんだけど……」「自分の命、大丈夫かな?」と不安を感じたら、自分の身体が発したアラートを信じて即座に保健所もしくはかかりつけ医に相談後、適切な医療機関を受診しましょう。
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