原子層エッチングがEUVの確率変動を低減:5nmロジックへと導く(1/2 ページ)
次世代の半導体製造プロセスに必須ともいわれるEUV(極端紫外線)リソグラフィ技術。今回は、大手装置メーカーのLam Researchが、EUVリソグラフィにおいて重要な要素となる確率変動について解説する。
極端紫外線(EUV)リソグラフィが普及拡大へと進む中、EUVリソグラフィ装置を手掛けるオランダASMLは、これまでEUVリソグラフィの量産(HVM)への導入を妨げてきた電源や稼働時間などの課題に取り組み続けています。一方で、この導入の遅れは半導体業界にイノベーションを促し、マルチパターニングを活用した液浸技術を前進させました。Lam Research(ラムリサーチ)の装置は、これまでマルチパターニングを必要とする1億枚を超えるウエハーのうち95%の加工に使用されてきました。
マルチパターニングによって、193nm液浸(193i)技術は7nmノードにまで拡張され(図1)、プロセスに依存する定数、k1はレイリー基準の限界である0.25を大幅に下回る0.13未満にまで微細化が進みました。最小加工寸法については、EUVリソグラフィにおけるk1のスケーリングは液浸技術よりも難しいため、5nmノードの実現にはマルチパターニングが必要になります。従って、Lam Researchは、マルチパターニングは193iだけでなくEUVリソグラフィにも応用されると考えています。
その一方で、半導体業界は、7nmおよび5nmノードにEUVを採用する中、EUVが通常であれば欠陥を低減するプロセス調整に役立つはずの解析や予測に従わないという緊急の課題に直面しています。この課題は、フォトレジストの組成、または高エネルギーのEUVリソグラフィで悪化したフォトレジストに衝突する光子数の両方における確率的変動またはランダム変動から生じるものです。これらの変動は、確率変動または確率的変動性*)と総称されています。
*)stochastics/stochastic variability。stochastics effectと言われることもある。「統計効果」「確率論的変動」などとも訳されている。
例えば、エッジ配置誤差(EPE)またはパターンの位置ずれは、これまでは主にオーバーレイによって生じており、スキャナー技術の向上によって対処されていました。しかし、今日ではEPE量の多くは、必ずしもオーバーレイが要因ではなく、むしろ確率変動に起因しています。
高解像度のEUVパターンについては、ラインエッジラフネス(LER)や真円度などの要素が、オーバーレイの効果よりも多くのEPEバジェットを占めています(図2)。エッチングは、LERを改善する技術として十分に確立されたものですが、それでもなお、EPEバジェットに合わせるためには増加する確率変動の重荷が課題として残っています。
EUV露光の確率変動
EUVリソグラフィが必要とする高エネルギー光子は液浸工程で使用される光子よりも少ないため、EUVリソグラフィでの確率変動は重要性を増しています。193iでは、例えば、光子は化学増幅型レジスト(CAR)で吸収され、二次電子を発生し、次に露光後の工程で反応する光酸を生成します。その一方で、EUVリソグラフィでは、より高エネルギーの少数の光子が高エネルギー光子を生成し、次に光酸発生剤(PAG)に衝突してレジストで電子カスケードを作り、露光後の処理に用いる酸を生成します。
レジスト内で反応を開始する光子数の変動だけでなく、レジストシステムにおいてカスケードで発生する電子数および電子エネルギーや光酸発生剤の分布の変動という点で、確率的挙動はパターン寸法(CD)外れの原因となります。例えば、互いに隣り合うビアは、各ビアが獲得する光子数の異なりや、各ビアで活性化する光酸の分布が異なることにより、必要な寸法よりも大きかったり小さかったりしていびつな形となる可能性があります。これにより、レジストで形成されるビアのアスペクト比が局所的に一致しなくなるため、エッチングの観点から問題が生じます。
露光の確率変動を解決する方法の一つは、単純に光子を増やす、すなわちドーズ量を増やすことです。この解決方法は局所的なCD均一性(LCDU)を向上させる一方で、図3で説明する通り、EUVスキャナーの生産性に大きな影響を及ぼします。レジストの解像度を向上させるために十分なドーズ量でスキャナーを動作させることは、スキャナーのスループットに影響を及ぼすため、最も難しい用途への採用のみに限定されます。
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