「スマホ用以外での投資不足が露呈した」、GFのCEO:半導体不足が深刻になる中(1/2 ページ)
世界的な混乱の中、米国バイデン政権はより高度な半導体の国内製造に向けて500億米ドルを割り当てることを提案した。GLOBALFOUNDRIES(GF)もこうした状況の中、奮闘を続けている。同社は既に米国で高度なICの製造を手掛けているが、エレクトロニクス以外の業界ではほとんど注目されないタイプのIC製造を専門としているため、エレクトロニクス業界以外にはほぼ知られていない。
世界的な混乱の中、米国バイデン政権はより高度な半導体の国内製造に向けて500億米ドルを割り当てることを提案した。GLOBALFOUNDRIES(GF)もこうした状況の中、奮闘を続けている。同社は既に米国で高度なICの製造を手掛けているが、エレクトロニクス以外の業界ではほとんど注目されないタイプのIC製造を専門としているため、エレクトロニクス業界以外にはほぼ知られていない。
GLOBALFOUNDRIESのCEO(最高経営責任者)を務めるTom Caulfield氏は、米国EE Timesに対して「米国が半導体ビジネスでの自立を目指すのであれば、それを担う多くの半導体企業が必要で、先頭に立つのはGLOBALFOUNDRIESだ。当社の役割は重要で、その役割を果たしたいと考えている」と語った。
2つの破壊的要因の影響を受ける半導体業界
エレクトロニクス業界は、2つの大きな破壊的な出来事の影響を受けている。パンデミックは恐らくは短期的な災害(そうであることを祈っている)だが、米中間の政治的対立は長期的な問題になると予想される。この2つが重なったことで、商用および軍用半導体の供給が世界的に非常に希薄になり、業界全体が不安に陥っている。
一般的に、プロセッサは魅力的な事業と考えられている。Intelのキャッチコピーである「Intel入ってる(Intel Inside)」に始まり、高性能コンピューティングの専門家からオンラインゲーマー、さらにはスマートフォンの一般ユーザーまで、誰もが新世代のCPUやGPUを待ち望んでいる。
CPU設計企業の多くは誰もが知る有名企業(AppleやIntel、Qualcomなど)で、主要なメーカーもよく知られている(IntelやSamsung Electronics、TSMC)。Analog DevicesやON Semiconductor、Qorvo、ルネサス エレクトロニクスは、最先端プロセッサの設計を手掛けてはいないが、半導体企業として成功を収めている。だが、あなたがこれらの企業に勤めているのでなければ、あなたの親がこれら企業の名前を耳にすることはないだろう。近所の人がUMCに投資したり、SkyWater Technologyの今後のIPO(新規株式公開)に関する情報を入手したりしない限り、この2社の存在すら知らないはずだ。
世間の注目度は通常はそれほど重要ではないが、今は問題の核心になっている。一般の人が聞いたことのない企業は、一般の議員も聞いたことがない可能性が高い。米国の議員はこのような見識の下で、半導体業界の複数の企業に500億米ドルを分配しようとしている。
米国政府がTSMCに対し、米国内でファウンドリーを建設、運営するための誘致を進めていることや、Intelが、独立したファウンドリー事業部門を新設する計画を大々的に発表し、それに伴う政府からのインセンティブ報酬について不適切ではないと主張していることなどを受け、一般的には名を広く知られていないGLOBALFOUNDRIESのCEOは今回、ビデオ会議に参加した。半導体製造や、Intelのファウンドリー事業発表などの他、GLOBALFOUNDRIESの今後の戦略について語った。
半導体業界は、これまでの歴史の大半の期間、PCやネットワーク機器などのコンピュータ中心のアプリケーションに注力してきた。継続的に大規模な投資を行うことにより、これまでにない優れた処理能力を実現すべく、必要とされる技術的な利益を追求してきたのだ。
Caulfield氏は、「コンピュータ中心分野の売上高は、半導体市場全体の30%程度を占めるにすぎない」と指摘する。にもかかわらず、生産能力向上のために費やされる世界全体の投資金額の大半が、市場の中でも小規模なこの分野をターゲットとしているのだ。具体的には7nm、5nm、3nmといった半導体製造プロセスノードであり、同氏はこれを「1桁台の製造」と呼んでいる。
同氏は、「過去10年ほどの間、スマートフォンの台頭を皮切りに、“パーベイシブコンピューティング”(pervasive computing/PCが至る所に存在し、いつでもどこでも使える状態)が緩やかな成長を遂げ、より多くのインテリジェンスが必要とされるようになった。これらのデバイスは、必ずしも多くの処理能力を必要とするわけではない。実際に、必要としない場合の方が多い。必要なのは、高電圧集積回路や低電圧集積回路、組み込みメモリ、RF、ミックスドシグナル回路などである。このような半導体チップを製造するにあたり、“1桁台”の製造技術は不要だ。この種類の大半の半導体チップは既に、さらなる微細化によって得られるメリットがほとんどないといえる」と述べる。
これこそが、GLOBALFOUNDRIESのターゲットとする市場である。
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