業界支援に500億ドルを投入する米国が直面する課題:“地理的特化”が生んだ脆弱性(1/2 ページ)
半導体業界の重役らは非常に大きな問題を共有している。それは、バイデン大統領が大統領命令の中で約束した支援金500億米ドルの優先順位をどのように決めるかという問題だ。
半導体業界の幹部らと会談したバイデン大統領
半導体業界の重役らは非常に大きな問題を共有している。それは、バイデン大統領が大統領命令の中で約束した支援金500億米ドルの優先順位をどのように決めるかという問題だ。
半導体業界の重役らはバイデン大統領とオンラインで会談し、半導体の生産能力やサプライチェーンを巡る課題について議論した。半導体工業会(SIA)あるいはホワイトハウスの本会談に関する公式声明のいずれからも新しい情報は伝わってきていない。バイデン大統領は「われわれは、この法案の中で多額の資金提供を模索中である。それは重要だが、十分ではないことも認識している」と述べ、500億米ドルの支援パッケージでは足りそうにないことを認めた。
バイデン大統領は会談で、シリコンウエハーを掲げながら「私がここに手にしているようなウエハー(チップ)やバッテリー、それにブロードバンド、こういったものは全てインフラだ。われわれは昨日のインフラを修理するのではなく、今日のインフラを構築しなければならない。政府が掲げる計画によって、数百万の雇用が創出されるだろう。米国は再構築され、われわれのサプライチェーンは守られ、米国の製造業は復興する。そして、米国の研究開発(R&D)は再び大きな原動力となるはずだ」と述べた。また、バイデン大統領は23人の上院議員と43人の下院議員から、プログラム「CHIPS for America」を支援する書簡が送られてきたことも言及した。
バイデン大統領はその書簡を引用しながら、「ここには、中国共産党が半導体サプライチェーンを積極的に再構築し、独占しようとしていると書かれている。また、それを実行できるようにするために中国共産党がどれくらいの資金を投じることができるかについても詳しく述べてある。私自身かなり前から口にしていることがある。すなわち、中国や世界のその他の国々、地域は待ってはいない。そして米国人が待つべき理由もない」と述べた。
会談に参加したのは、SIAの理事であるTom Caulfield氏(GLOBALFOUNDRIESのCEO)、Pat Gelsinger氏(IntelのCEO)、Sanjay Mehrotra氏(Micron TechnologyのCEO)の他、NXP Semiconductors、Samsung Electronics、TSMCといったSIAのメンバー企業の上級エグゼクティブたちである。ホワイトハウスは会談後の声明で、米国の半導体メーカー、技術企業、自動車メーカー、半導体を使用する企業など、半導体不足の影響を受けている業界のCEOや上級幹部から直接話を聞くことができたと述べた。
会談では、半導体サプライチェーンの透明性を改善し、現在の半導体不足を緩和することの重要性や、将来の課題を軽減できるよう、サプライチェーン全体の需要予測を改善することの重大さも、重点を置くべき主要なトピックとなった。
声明によると、米国における半導体製造能力の増強を推進することで、半導体不足の問題が二度と生じないようにすることの重要性についても議論がなされたという。そして最後に、バイデン大統領が発表した「American Jobs Plan(米国雇用計画)」に基づきインフラ投資を行うことで、未来のインフラを構築し、サプライチェーンの回復力を強化することによって、いかに米国の競争力と国家安全保障を増強することが可能であるかという点についても話し合いが行われた。米国は、基幹技術分野における世界的リーダーとしての位置付けを維持し、未来のクリーンエネルギーへの移行を確実に進めていきたい考えだ。
SIAは、会談後に短い声明を発表し、「半導体の製造、研究に500億米ドルの資金提供を行うというバイデン大統領のサポートに対し、称賛の意を表したい。半導体は米国にとって、雇用創出やパンデミックへの対応、国家安全保障、教育システムなどの他、航空宇宙や自動車、クラウドコンピューティング、医療用機器、電気通信などの幅広い分野における成長とイノベーションを実現する上で、心臓部となっている」と述べている。
さらにSIAは、「バイデン大統領のインフラ計画は、CHIPS for America Act法案の要望に基づき、半導体製造におけるインセンティブと研究に資金を提供することによって、米国の半導体製造およびイノベーションの全面的な強化を実現するだろう。米国経済のあらゆる分野において、それぞれが必要とする半導体を確保できるようになる。今回の会談により、バイデン政権と半導体業界が引き続き強力なパートナーシップを維持しながら、米国内の半導体製造/研究に対する連邦政府投資を実施することによって、米国の半導体サプライチェーンを強化することが可能だと明示された」と述べる。
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