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プログラミング教育は「AIへの恐怖」と「PCへの幻想」を打ち砕く?踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(13)STEM教育(1)(7/10 ページ)

今回から「STEM教育」を取り上げます。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあり、デジタルやITの存在はますます大きくなっています。これからの時代、「デジタル=インフラ」として捉えることができなければ、生き抜くことができないと言っても過言ではありません。それを考えると、確かにSTEM教育は必須なのですが……。プログラミングの“酸いも甘いもかみ分けた”エンジニアとしての視点で、STEM教育を斬っていきます。

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コンピュータ=絶望的なアホだと分かってもらう

 さて、話を「小学校のプログラミング教育」に戻します。この教育の対象は小学生です。小学生にコンピュータを動かす方法、つまり「プログラミング」を教えるというのは、正直、むちゃだ、と私ですら思います。なぜなら、そもそも、プログラミングというのは、人間が進化の過程で獲得してきた労働の知見を、何一つ生かすことができない、人間の直感に反する作業だからです。

 しかし、さすがは文部科学省。その辺のことは良く理解していて、小学生におけるプログラミング教育の目的を、「プログラミングの履修」とはしていません

つまり、

(1)(どっかの小人さんではなく)人間が「プログラム」というものを作っていて、
(2)その「プログラム」がなければ、コンピュータは動かなくて、
(3)私たちの周りにあるものは、ほぼ全部、コンピュータで動いているものであり、
(4)プログラムは、完全に正確に作らないと、ウンともスンとも動かないものであり、
(5)コンピュータといえども、なんでもできる解決できるわけではない(恋愛とかいじめなど、解決できない)

という5つをたたき込めば良い、という割り切り方をしています。

 ただ、その中でも上記(4)の「プログラムは、正しくに作らないと、ウンともスンとも動かないものである」については、座学(教科書を使ったもの)ではなく、実際にコンピュータ(パソコン)を触って「動かないことを、子どもたちに思い知らせる」というスタンスが見て取れます ―― これ、実に正しいアプローチだと思います。

 これまでの、「なんか、テキトーに書いて、提出するだけの宿題」とは、まるっきり違うものであり、動かなければ何もしなかったことと同じで、コンピュータは本人の努力とか根性なんぞ全く考慮しない ―― それがプログラミングである、ということを、理解させようとしているようにも思えます。

 つまるところ、

(1)君たちが相手にするコンピュータなるものは、プログラムのたった一文字の違い(大文字と小文字の違い)ですら理解できない、絶望的なアホであり、

(2)この絶望的なアホ(コンピュータ)は、命令の順番が1つだけ狂っているだけでも、訳の分からない動きをする、行間が(空気が)読めない無能な電気スイッチの集合体であり、

(3)私達の世界のほぼ全ては、こんな絶望的なアホで、空気の読めない無能な電気スイッチの集合体によって、支えられている現実に驚愕(きょうがく)すべきであり、

(4)プログラミングが、いかに面倒くさく、大変で、そして危険なものであるかを、自分で体験して、その上で、―― 私たちの世界が、こんな危ういもの(プログラム)で支えられている事実に愕然(がくぜん)としろ

ということが伝われば十分なのです ―― が、正直、ここまで小学生に教えられるかどうかは分かりません。

 取りあえず、「コンピュータ=バカ」「プログラミング=地獄」の端緒に触れられれば、まずはOKだと、私は思っています。

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