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Infineon、電気制御のデジタル化に向けAmberと協業建物の全配電網にインテリジェンス統合を(1/2 ページ)

Infineon Technologies(以下、Infineon)とAmber Solutions(以下、Amber)が協業を発表した。Amberが開発した半導体アーキテクチャによって電気のデジタル制御を実現する技術を、共同で製品化していく考えだ。

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 Infineon Technologies(以下、Infineon)とAmber Solutions(以下、Amber)が協業を発表した。Amberが開発した半導体アーキテクチャによって電気のデジタル制御を実現する技術を、共同で製品化していく考えだ。

 主な用途として、AC-DCイネーブラーやスマートブレーカー向けACスイッチなどのAmberの特許技術と、調光器、Infineon製品群との統合などに注力していくという。AmberのCEO(最高経営責任者)であるThar Casey氏と、Infineonのスイッチング電力部門担当シニアディレクタを務めるSteve Bakos氏は、米国EE Timesのインタビューの中で、「両社の協業により、デジタル電気制御市場にターゲットを定めていく」と述べている。

 Casey氏は、「われわれの目標は、ソリッドステート技術を利用することにより、電気機械を超えるシステムを実現することにある。電気機械システムは現在一般的に、大量の電解コンデンサーや磁気装置、変圧器、受動素子などで構成されている。両社で協業することにより、あらゆる種類の居住用建物や商業ビルの全ての電気エンドポイントを、インテリジェンス機能を組み込んだ最新の半導体アーキテクチャへと転換させていきたい」と述べる。

 また同氏は、「われわれが、ソリッドステート電力供給の強力なチャンスを推進していく上で、Amberの技術ポートフォリオや顧客基盤の他、Infineonがインダストリアルパワーコントロール(IPC)などの市場において最大規模の半導体サプライヤーとしての地位を確立していることなどが、大きな後押しとなるだろう。現時点での目標としては、既存の市場を破壊することにより、照明調節スイッチやブレーカーなど、建物の配電網の全ての部分に、最新の半導体ベースのインテリジェンスを統合していくことを掲げている。当社の技術向けに革新的な道筋を模索するとともに、Infineonの技術との統合によって市場向けに新しいソリューションを提供することを目指している」と付け加えた。


スマートサーキットブレーカー 出典:Amber Solutions

 Bakos氏は、「住宅用のスイッチやコンセント、ブレーカーなどの市場は、非常に高い潜在的可能性を秘めており、今まさに”破壊”に向けた準備が整いつつある。当社は、Amberの技術に注目し、協業すればこうした移行期を共にけん引していくことができると確信した。われわれは、MOSFETだけでなく、マイコンやセキュリティIC、センサーなども取りそろえていることから、こうした市場の用途向けにインテリジェンスを統合していく上で、サポートを提供することができる」と述べている。

AmberとパワーMOSFET「CoolMOS」

 電気のデジタル制御が実現すれば、アップグレード可能なファームウェアや組み込み機械学習アルゴリズムを、電気システムに導入できるようになる。ソリッドステートアーキテクチャを採用することにより、ソフトウェアインテリジェンスを電気製品や電気インフラ、建造物などに直接組み込むことが可能になる。

 AmberのAC-DCイネーブラーとACスイッチは、電気のデジタル制御を提供可能だとうたわれている。イネーブラーのトポロジーは、磁気や高電圧電解コンデンサーなどを必要とせずに、AC-DC変換を提供することができる。最大5Wの安定化した低ノイズのDC出力が可能だという。


AmberのAC-DCイネーブラ― 出典:Amber Solutions

 Amberのアークフリーデジタルパワーマネジメントスイッチは、かさばるリレーや調光器を取り除くために開発されたもので、漏電検知器やアーク故障回路安全装置向けに、双投式のソリッドステート配線不良回路遮断器を備えている。またスイッチは、Infineonのマイコンと独自のアーキテクチャで構成されたMOSFETをベースに作られている。両社によると、この手法は、過電流やサージ、過熱などから保護されているという。

 Bakos氏は、「これらの製品のアプリケーション環境は、非常に厳しい可能性があるため、失敗は許されない。半導体ソリューションは、既存のソリューションよりも優れた信頼性を提供する必要がある」と述べる。「Amberは、このような種類の用途向けとして独自に開発された、当社の『CoolMOS 7スーパージャンクションMOSFET』技術を採用している。この技術は『S7』と呼ばれ、旧世代のCoolMOSシリーズと比べると、スタティックスイッチングアプリケーションにおける負荷範囲に対して効率性を向上できるとして推奨されている」(同氏)

 Bakos氏は、「パワーMOSFETは、スタティックスイッチングアプリケーション用途において、毎分数サイクルから低いキロヘルツ(kHz)範囲までの低周波数でスイッチングを行う。こうした用途におけるMOSFETのスイッチング電力損失は、大して心配する必要はない。MOSFETの電気的特性の中で強調すべき点は、その導通損失の低さと堅牢性だ」と説明する。

 「また、Infineonは今後、MOSFETとSiC(炭化ケイ素)性能を最適化していく考えだ。このような種類の用途向けに、信頼性やパッケージング、コスト最適化などを実現していきたい」(同氏)

 高電圧スーパージャンクションMOSFETのS7ファミリーは、22mΩのチップをTOリードレスSMDパッケージに収めることで電力密度を向上している。この設計がターゲットとするのは、MOSFETを低周波数でスイッチングする用途向けだ。例えば、アクティブブリッジ整流や、インバータステージ、突入リレー、PLC、パワーソリッドステートリレー、ソリッドステートブレーカーなどが挙げられる。ソリッドステートリレーやソリッドステートブレーカーの設計に関しては、スーパージャンクションMOSFETの製品ファミリーや、IGBT、低/中電圧MOSFET、直流的に絶縁されたゲートドライバ、光アイソレーターなどによって補完されている。


CoolMOS S7ソリューション 出典:Infineon Technologies
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