検索
特集

メモリコントローラーの未来は、まだNANDに依存新興メモリやSCMが拡大しても(1/2 ページ)

メモリコントローラーの未来は、それらが制御するメモリと切っても切れない関係にある。同様に、メモリコントローラーもムーアの法則に支配されている。新しいアーキテクチャによってストレージクラスメモリ(SCM:Storage Class Memory)が勢力を拡大する可能性があるが、メモリコントローラー市場は依然としてNAND型フラッシュメモリに支配されている。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 メモリコントローラーの未来は、それらが制御するメモリと切っても切れない関係にある。同様に、メモリコントローラーもムーアの法則に支配されている。新しいアーキテクチャによってストレージクラスメモリ(SCM:Storage Class Memory)が勢力を拡大する可能性があるが、メモリコントローラー市場は依然としてNAND型フラッシュメモリ(以下、NAND/NANDフラッシュ)に支配されている。

 米国の半導体市場調査会社Objective Analysisで主席アナリストを務めるJim Handy氏は、「数年ごとにフラッシュの密度が2倍になることには誰もが慣れているが、同様の速度でコントローラーが複雑化しているという事実は考慮されていない。こうした事情によって、SLC(Single-Level Cell)からMLC(Multi Level Cell)、TLC(Triple Level Cell)、QLC(Quadruple Level Cell)に移行して、高速化と耐久性の向上、機能の追加が図られてきた」と述べている。同氏は、「コントローラーは性能が向上し高速化しているので、全く機能しないフラッシュチップに接続しても適切なデータを取り出せるようになる日も近いかもしれない」と冗談交じりに語った。


Marvellの「Bravera SC5」コントローラー 出典:Marvell

 Handy氏は、「新興メモリやSCMが勢力を拡大したとしても、メモリコントローラー市場が大きく依存しているのはフラッシュデバイスで、SSDですらない。ユニット数でいえば、コントローラーの出荷数が最も多いのはフラッシュメモリカード(microSDなど)である」と述べている。

 一方、新興メモリは一般的に、エラー訂正コード(ECC)やウェアレベリングなどの機能に関して、NANDフラッシュに比べコントローラーをほとんど必要としない。Intelの「Optane」などの「3D Xpoint」メモリには、ウェアレベリング機能が組み込まれているほどだ。Handy氏は、「フラッシュメモリと比べると新興メモリの管理は非常に簡単だ」と述べている。

 Handy氏は、「フラッシュメモリカードのコントローラーはSSDコントローラーほどの高度な技術はほとんど必要ない。新興メモリのコントローラーも、どれも比較的簡単に製造できるようになるだろう」と述べる。高度な技術が必要なければ、コストは抑えられることになる。

 「現在、ローエンドSSDコントローラーの価格は1米ドルで、ハイエンドSSDコントローラーは75〜100米ドルくらいだ。コントローラーは、かつては数百米ドルだった小型計算機と同じ道を歩んでいる。四則計算電卓の機能は過去数十年間変わらず、内蔵チップの小型化と低価格化が進んでいるため、10年前には、電卓が無料で配られ始めた」と同氏は述べ、「新機能が追加されなかったり、顧客が1年前や10年前と同じ機能で満足したりすれば、コントローラーを待ち受けているのはこれと同じ未来だ」と続けた。

 「コントローラーは、より高機能になって多くの機能が追加されるか、価格が大きく下がるかのどちらかだ。コントローラーを独自開発する企業にとって、開発コストを抑えることはメリットがあるが、より高機能なECCなどの機能を追加することは、製品が低価格な部品になってしまうのを防ぐことができる」(同氏)

 フラッシュストレージ向けの次世代インタフェース規格「NVM Express(NVMe)」のテクニカルワークグループのチェアマンを務めるPeter Onufryk氏は、コントローラーがSSDの価値の大きな部分を占めると考えている。

 同氏は、「NANDフラッシュはベンダーによって異なるため、あるNANDが他のNANDより優れていることもあるが、コントローラーはそうした特性を持つNANDを完全に使用可能なものに変える。コントローラーは、ミッドレンジのスマートフォンのような特定のワークロードに対して想定されていることをNANDが確実に実行できるようにするものであり、自動車にエンジンが不可欠であるように、SSDになくてはならないものだ。だが、顧客の期待に応える製品でなければ、そのコントローラーは2年後にはごみ同然になっているだろう」と述べる。

 他社のコントローラーと差別化する特徴や機能で顧客の期待に応えることが、商用コントローラーメーカーの成功の鍵となる。Onufryk氏によると、サードパーティー製のコントローラーには主に3種類のユーザーがいるという。特殊な使い方をしたいハイパースケーラー、ポートフォリオを構築したいSSDベンダー、ノーブランドのSSDを販売するベンダーの3種類だ。

 同氏は、「結局のところ、SSDの新機能は、電力と性能のバランスやNVMeの新機能、SSDの独自機能の有無にかかわらず、コントローラーによって実現される。あらゆる企業が依然として、独自のコントローラーを作ろうとしている」と述べている。

 Onufryk氏は、「こうした状況によって、コントローラーの多様な特徴や機能要件が生み出されると期待されるが、固定機能のコントローラーかプログラマブルコントローラーかによって、それぞれ異なる課題が生じる。プログラマブルであるがゆえに電力が犠牲になる。反対に、固定機能のコントローラーは、新しい機能に対応するために進化することができない。現時点で、かつてないほど多くの人がさまざまなチャレンジをしている」と述べている。

 「ただし、ハイパースケーラーの数は限られていて、NANDメーカーやSSDメーカーのロードマップは流動的で商用コントローラーをどこに採用するかが変わる可能性もあるため、参入が難しいビジネスで、市場は不安定だ。また、ファームウェアやメディア、ECCに関する多くの専門知識が必要であるため、新興企業がコントローラービジネスへの参入を図ったり、実績あるベンダーがコントローラー製品の開発を計画したりすることは考えにくい」と同氏は述べている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る