堅調に成長するCXLエコシステム:新製品も続々登場(1/2 ページ)
Micron Technologyが3D XPointの開発から撤退したことが話題となった。急速に台頭するインターコネクト規格「Compute Express Link(CXL)」に注力することを選んだためだという。だがもちろん、CXL関連製品を発表したのは、同社が初めてではない。
Micron Technologyが、Intelと共同開発した次世代不揮発メモリ「3D XPoint」の開発から撤退したことが話題となった。急速に台頭するインターコネクト規格「Compute Express Link(CXL)」に注力することを選んだためだという。だがもちろん、CXL関連製品を発表したのは、同社が初めてではない。
Rambusは自社の幅広いIP(Intellectual Property)ポートフォリオを囲い込むことで、急成長するCXL市場に対処している。最近の買収の一部もこのために行われた。Samsung Electronics(以下、Samsung)も最近、高性能DRAMモジュールを発表している。
Samsung ElectronicsがCXLメモリモジュールにDDR5 DRAMを採用したのは、2022年にCXLが本格的に普及した場合に帯域幅、容量拡張、速度、信頼性、電力効率の面で、DDR5が最もコスト効率の高いソリューションになると期待しているからだ 出典:Samsung Electronics
SamsungのDDR5(Double Data Rate 5)DRAMベースのメモリモジュールは、メモリ容量と帯域幅の大幅なスケーリングが可能なサーバシステムを必要とするデータ集約型のアプリケーションをターゲットにしたものだ。そうしたアプリケーションの例として、人工知能(AI)や高性能コンピューティング(HPC)などがある。同社は、CXLコンソーシアムが設立された2019年以降、データセンターやサーバ、チップセットの製造を手掛けるいくつかの企業と連携して、次世代インタフェース技術を開発している。
同社バイスプレジデントで、データセンタープラットフォームグループを率いるCheolmin Park氏によると、同社はメモリ容量や帯域幅の拡大が求められる新たなアプリケーションに関心を寄せる主要なデータセンターやメーカーといった顧客から、多くの好意的なフィードバックや連携に関する提案を受けているという。
Park氏は、「われわれは、DRAMをベースとしたCXLメモリの拡張が、システムレベルで帯域幅と能力を向上するための最善の解決策であるという結論に達した」と述べた。同氏は、Samsungと顧客のCXLならびにDDRに関する連携によって、2021年後半から有意義な結果がもたらされるようになると見込んでいる。さらにPark氏は、「その後は、当社のCXLメモリに対する需要が市場全体で引き続き着実に高まると期待している」と述べた。
PCIe(PCI Express)インタフェースをはじめ、CXLの実装に用いられる技術が検証済みで、幅広く商用化されていることも、事態の進展を後押ししている。Park氏は、「DDRコントローラーをAP(アプリケーションプロセッサ)やCPUの内部に統合するのと同様に、CXLコントローラーをDDRインタフェースに統合することは、それほど難しいことではない」と述べた。ただし、CXLインタフェースをサポートするアクセラレータやネットワークインタフェースカードのP2P(ピア・ツー・ピア)通信やDMA(Direct Memory Access)の安定化は課題になる可能性があるという。
Park氏は、Samsungが既存のPCIeインフラに向けて最適化したCXLメモリを提供する予定だと述べた。最適化では、顧客のメモリ拡張要件を満たせるよう、CXLレイヤーが追加された。また、同社は、従来のメモリシステムと同等の性能、システム信頼性、ソフトウェア環境、安全性を確実に顧客にもたらすために、「CXL Memory Software Development Kit」も提供する予定だ。
Park氏によると、SamsungはDRAMにDDR5を用いることを選んだが、その背景には2022年にはサーバシステムが実際にCXLをサポートするようになり、CXLベースのDRAMが主流になるという同社の予測がある。同氏は、「帯域幅、容量拡大、速度、信頼性はもちろん電力効率という観点からも、DDR5が最もコスト効率の高い解決策になると見込んでいる」と述べた。
現時点ではまだCXLは主流ではないが、「Intel、AMD、Arm製のサーバプラットフォームがCXLのサポートを開始していることから、CXL市場に対処し始めたことは理にかなっている」とPark氏は述べた。また、同氏は、「CXLメモリに対する市場需要は高まりつつある。従って、今はホストメーカーやデバイスメーカーにとってCXLの広範なエコシステムを共同で構築するのに最適な時期であると確信している」と述べている。さらに、SamsungがDRAMを超えてCXLの使用を拡大し、NAND型フラッシュメモリやSCM(Storage Class Memory)も含めることを模索していることも明らかにした。
IDCのソリッドステートストレージならびに実現技術関連リサーチ担当バイスプレジデントであるJeff Janukowicz氏によると、インメモリのデータベースであれ、AIや機械学習のような新興のアプリケーションであれ、より高度な性能が求められるあらゆる領域において、次世代の作業負荷の一部をメモリプール拡張でサポートすることに、多大な関心が寄せられているという。Janukowicz氏は「CXLのようなものが参入し、何らかの利点をもたらせられるのはそこだ」と述べた。「DRAMだけでなく、SCM製品の一部もCXLインタフェースへ移行しても不思議ではない」(同氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.