エッジ処理がクルマのデータと保険のギャップを埋める:NXP×Moterがプラットフォーム開発(1/2 ページ)
コネクテッドカーのデータがますます豊富になっている一方で、自動車メーカーはいまだそうしたデータを効果的に収益化できるようにはなっていない。その理由として、既存のインフラ内でそうしたデータを使用する方法や、十分なROI(投資利益率)でデータを処理する方法に関する専門知識が不十分であることが挙げられる。
コネクテッドカーのデータがますます豊富になっている一方で、自動車メーカーはいまだそうしたデータを効果的に収益化できるようにはなっていない。その理由として、既存のインフラ内でそうしたデータを使用する方法や、十分なROI(投資利益率)でデータを処理する方法に関する専門知識が不十分であることが挙げられる。
アジア大手の保険グループのデータサイエンス関連子会社Moter Technologies(以下、Moter)で最高デジタル責任者(CDO)を務めるMichael Fischer氏によると、大きな課題は車両データへのアクセスを得ることだという。Fischer氏は、NXP Semiconductors(以下、NXP)のグローバルマーケティングディレクターであるBrian Carlson氏とともに米国EE Timesとのブリーフィングに応じた。その中で同氏は、2社が自動車と保険のエコシステムの間にあるギャップを埋めるのを後押しする新たなパートナーシップにおいて、前述した課題にどのように対処しているのかを説明した。
半導体企業とインシュアテック(InsurTech=保険(insurance)とテクノロジーを組み合わせた造語)企業の連携を通じて、安全なデータ交換のための新たなプラットフォームが生み出された。このプラットフォームは、コネクテッドカーから得たデータを保険業界で活用できるよう、リスク評価やコストモデリングのためのデータサイエンスソリューションに貢献するものだとする。
同プラットフォームは、車両全体のデータにアクセスできるようになり、自動車向けエッジコンピューティングを実現するNXPの自動車用ネットワークプロセッサ「S32G2」とMoterのデータ分析ソフトウェアを組み合わせたもので、新しい自動車保険サービスに向けて車両データを完全に収益化するのに役立つという。
NXPとMoterが開発した新プラットフォームは、エッジでの車両データへのアクセスを容易にし、高度な保険サービスや車両の状態をモニタリングするサービス、フリート管理サービスなど、車両データを活用した新しい機会を実現するための重要な要素になるという 出典:NXP Semiconductors、Moter Technologies(クリックで拡大)
NXPのCarlson氏は「新たなプラットフォームを用いれば、以前はできなかったことができるようになる。当社の量産レベルのリファレンス設計である『GoldBox』を使って、車両データに深くアクセスできるようになるからだ。GoldBoxは、自動車のあらゆる部分からのデータを提供するSoA(Service Oriented Architecture)ゲートウェイを実現する。OTA(Over The Air)によるアップデートも可能だ」と説明した。
GoldBoxは、S32G2ファミリの1つをベースとしており、自動車の安全で確実なエッジ処理、OTAサービスのサポート、車内ネットワークへの接続性、次世代の自動車アプリケーションに必要なクラウドを実現する。
S32G2は、高性能とリアルタイム性の両方を実現する他、自動車ネットワークインタフェースと組み合わせたアプリケーション処理や、ネットワークアクセラレーション、ハードウェアの安全性をもたらす。加えて、機械学習(ML)アクセラレーションに向けたサポートの拡大、大容量ストレージ、サービス重視型の強力なゲートウェイを実現するための無線接続性も実現する。
Moterのプラットフォームは、OTAアップデートが可能な高度なリスクアルゴリズムを実現する。また、保険事業者やモビリティ関連企業のカスタマイズされた保険アルゴリズムと組み合わせれば、市場性のあるドライバーインサイトを創出できるようになる。
Moterのプラットフォームのライセンス供与を受け、自動車メーカーが利用すれば、ドライバーから収集したデータのサブスクリプションや購入を望む保険業者やモビリティ関連企業とのデータ交換を円滑化できる。そうしたデータが手に入れば、利用ベースの保険など、車両データ主導の新たな製品を実現できる。
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