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インタビュー

「半導体は清々しい」、ルネサス柴田社長インタビューDialog買収でアナログの土壌整う(1/2 ページ)

2021年8月31日、英Dialog Semiconductorの買収を完了したルネサス エレクトロニクス。ルネサスの社長兼CEOである柴田英利氏に、Dialogが加わることへの期待と半導体ビジネスに対する思いを聞いた。

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 2021年8月31日、英Dialog Semiconductor(以下、Dialog)の買収を完了したルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)。2017年のIntersil、2019年のIDTに続く、3つ目の大型買収である。

 ルネサスとDialogは、もともと今回の買収以前から、Dialogがルネサスの車載用SoC向けにパワーマネジメントソリューションを提供するなど、パートナーとして協業してきた。買収完了と同時に、両社の両社の製品を組み合わせたソリューション「ウィニング・コンビネーション」を、IoT(モノのインターネット)と産業向けに39種類発表し、シナジーを強調している。また、今回の買収によってDialogから約1800人の研究開発者がルネサスに加わり、R&Dの人員構成は日本が46%と、ルネサス史上初めて日本が半数を下回った。

左=Dialog買収後の研究開発の人員構成/右=「ウィニング・コンビネーション」の一例[クリックで拡大] 出所:ルネサス エレクトロニクス

 ルネサスの社長兼CEOである柴田英利氏に、Dialogが加わることへの期待と半導体ビジネスに対する思いを聞いた。

シリコンバレー企業にはない、アグレッシブさ

――Dialogの買収が完了しました。技術的なシナジーを含めDialogという企業の魅力についてあらためてお聞かせください。

柴田英利氏 技術的な強みという点でいえば、低電力のパワーマネジメントやBluetoothやWi-Fiなどのコネクティビティである。Bluetooth関連の製品はルネサスも開発しているが、Dialogの方がずっと先を行っている。IoT(モノのインターネット)という観点でいえば、どこにでも必要とされる、優れた技術をDialogは持っている。われわれとしては、のどから手が出るほど欲しかったものだ。

 ただ、Dialogの魅力は、技術的なところだけではない。買収発表当時から思っていたことではあるが、今、より強く思っているのが、優れたエンジニアリングカルチャーが根付いているという点だ。これは、端的に言えば、エンジニアのことをよくケアしているということ。エンジニアが働く環境や、キャリア実現をとても尊重している。もちろん、ビジネス(=利益を出すこと)はしっかりしないといけない。けれども、やはりいいモノを作りたい、面白いことをしたいというマインドが強いのがDialogという企業だと感じる。


ルネサス社長 柴田英利氏

――そういったエンジニアリングカルチャーは、ルネサスに何をもたらしてくれると期待していますか

柴田氏 よりアグレッシブに取り組んでいく姿勢だ。ルネサスは、もっと貪欲に、新しい物事や新しいテクノロジー、新しい考え方を取り入れたり、取り組んでいったりするべきだと考えている。

 これまでは、顧客の要求があって初めて本気になるところがあった。より高精度なAI(人工知能)、より低消費電力のIP(Intellectual Property)、よりさまざまな要素を搭載したコネクティビティなど、顧客に対して、「こんなに優れた技術がある」とこちらから提案、提供できるようになってほしい。少なくともDialogはそういうメンタリティがある。

――ルネサスは、「Transparent、Agile、Global、Innovative、Entrepreneurial」という5つの要素を“ルネサスカルチャー”として掲げていますね

柴田氏 そういったマインドは、IntersilもIDTももたらしてくれたものではあるが、Dialogは、よりアグレッシブに成長してきた会社だ。シリコンバレーの企業ではないので、米国企業とは違う意味のアグレッシブさを持っている。その辺りは、同様に米国企業ではない当社との親和性が高いところでもある。

 シリコンバレーには、良くも悪くも人やモノといったリソースが有り余るほどある。乱暴な言い方をすれば、新しい技術を実現したいときに、資金さえあれば人を雇用できるし、人が来れば技術も来る。

 だが、日本も英国も、人(エンジニア)が少ない国だ。そこでDialogは、人がいるところに、自分たちから赴いた。だから、世界のあちこちにオフィスがある。技術を持った人がいるところに自分たちが行こうというアグレッシブさは、シリコンバレーベースの企業にも、ルネサスにもない。

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