ファブライト化を強調、300mm工場への移行を急ぐ:onsemi CEO Hassane El-Khoury氏
onsemi(オンセミ)の社長兼CEOであるHassane El-Khoury(ハッサーン・エルコーリー)氏は2021年9月、日本のメディアとの合同インタビューをオンラインで行った。
onsemi(オンセミ)の社長兼CEOであるHassane El-Khoury(ハッサーン・エルコーリー)氏は2021年9月、日本のメディアとの合同インタビューをオンラインで行った。
El-Khoury氏は2020年12月7日付でonsemi(当時の社名はON Semiconductor)の社長兼CEOに就任。onsemi入社前は、Cypress Semiconductorの社長兼CEOおよび取締役会メンバーを、CypressがInfineon Technologiesに買収されるまで勤めていた。同氏は2018年に「シリコンバレーの40歳未満の40人」にも選ばれている。
日本のメディアとの主なやりとりは以下の通り。
――社名をON Semiconductorからonsemiに変更した意図は? 製品ポートフォリオはどのように変わっていくのか。
Hassane El-Khoury氏 社名変更を通じて、自動車および産業用途にフォーカスしていくという新しい姿勢を示したかった。特にインテリジェントパワーおよびインテリジェントセンシングの分野には積極的に投資をしていく。研究開発は全てこれらの領域に集中させる。さらに、これからは設計やマーケティングの手法、顧客とのやりとりなども変えていく必要がある。今までの当社の歴史を重んじながらこれらの変化を求めていくため、ON Semiconductorという旧社名とは違う、だが大きくは違いすぎない“onsemi”という社名を選んだ。
――半導体不足が続いているが、現在onsemiの製品で供給がひっ迫しているものはあるか。半導体不足解消はいつごろを見込んでいるか。
El-Khoury氏 半導体の需給バランスの崩れは幅広い分野に及んでいる。当社の製品でも(供給体制が)比較的良いものもあるが、それはどこで製造しているかによる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあり、工場の一時閉鎖があるかないかで大きく左右されている。2022年上期中は、こうした制約が続くとみている。同年下期には状況が改善することを期待しているが、COVID-19の状況次第というところもあるだろう。
SiCは基板からパッケージまでを網羅
――SiCパワー半導体事業の現状と今後の方針について。特に、SiCウエハーの内製化やSiCモジュール製品の拡充はどうしていくのか。
El-Khoury氏 SiCパワー半導体は電気自動車(EV)にとって極めて重要な技術であり、今後3〜4年間でより重要性が増すだろう。当社は特にパッケージング技術の開発に力を入れている。2021年8月には、SiC材料を手掛ける米GT Advanced Technologies(GTAT)の買収を発表した。GTATの買収により、われわれはSiC基板からパッケージまでを網羅できるようになる。今後の5年でSiCパワー半導体の製造能力を増強すべく投資を行っていく。
――300mmウエハーによるパワー半導体の量産について、onsemiの現状を教えてほしい。
El-Khoury氏 (onsemiがGLOBALFOUNDRIESから買収した)米ニューヨーク州フィッシュキルの300mm工場で、ディスクリート製品およびパワー半導体の製造に切り替えているさなかだ。300mmウエハーで製造したパワー半導体も既に出荷しており、製造能力を拡大すべくさらに投資を続ける。同時にSiCウエハーでも大口径化を進めていく計画だ。
――GaNパワー半導体については。
El-Khoury氏 当社が注力している自動車、産業機器の分野では、700V〜1200Vといった高電圧のパワーが要求される。それに応えられるのは現時点ではSiCである。GaNのアプリケーションはパワーアダプターやチャージャーなどで、今のところ自動車関連ではない。onsemiとしては今のところ強くフォーカスはしていない。
ファブライト戦略を強調
――製造拠点について、日本の新潟工場(2020年8月に売却検討を発表)、会津工場を含め、今後の予定や戦略を教えてほしい。
El-Khoury氏 当社は2021年8月に、工場の数を減らすファブライトの方針を発表した。工場関連の固定費を削減するためだ。ただし、製造能力そのものについては、300mmウエハー関連に投資するなど、増強していきたい。つまり今後当社は、工場の数自体は減らしつつ製造能力を上げるため、会津工場も含めて投資を続けていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 300mm工場も取得、広範製品群で車載中心に拡大へ
省エネ化/低炭素社会のキーデバイスとして、近年注目を集めるパワー半導体。次世代素材の開発など競争が激化する中、主要メーカーはいかに戦っていくのか。今回は、企業/事業買収を積極的に進め急速に規模を拡大してきたOn Semiconductor(オン・セミコンダクター/以下、オンセミ)のパワー・ソリューションズ・グループ(PSG)ジャパンサイトマネジャー、夏目正氏に話を聞いた。 - オンセミ、SiC材料を手掛ける米GTATを4億ドルで買収
onsemi(オンセミ)は2021年8月25日(米国時間)、SiCの製造を手掛ける米GT Advanced Technologies(以下、GTAT)を4億1500万米ドルの現金で買収する正式契約を締結したことを発表した。 - ST、Creeとの150mm SiCウエハー契約を再拡張
STMicroelectronics(以下、ST)は2021年8月17日(スイス時間)、Creeとの150mm SiC(炭化ケイ素)ウエハーに関する今後数年間の供給契約を拡張したことを明らかにした。 - 2050年までの世界半導体市場予測 〜人類の文明が進歩する限り成長は続く
コロナ禍にあっても力強い成長を続ける半導体市場。2050年には、どのくらいの市場規模になっているのだろうか。世界人口の増加と、1人当たりが購入する半導体の金額から予測してみよう。 - ファウンドリー投資が続く半導体業界
世界の半導体メーカーは、製造施設の拡張や稼働率の詳細を明らかにしていないが、市場予測によると、主にメモリ需要の回復によってフロントエンドの生産能力が着実に増加する見通しだという。