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半導体製造装置と材料、日本のシェアはなぜ高い? 〜「日本人特有の気質」が生み出す競争力湯之上隆のナノフォーカス(45)(3/6 ページ)

半導体製造装置と材料の分野において、日本は非常に高いシェアを持っている。これはなぜなのか。欧米メーカーのシェアが高い分野と比較し、分析してみると、興味深い結果が得られた。

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欧米人はどのように装置を開発するか

 一方、日本のシェアが低い分野において、高いシェアを誇るアプライドマテリアルズ(AMAT)、Lam Research(Lam)、KLA、ASMLの4社の欧米企業は、どのように装置を開発しているのだろうか?

 まず、マーケティングによりニーズをつかむ。そして、各種の装置開発の最初にはサイエンスがある。これらニーズとサイエンスのもと、強力なリーダーのトップダウンによって、装置全体をアーキテクトする。その際、モジュール化することが多い。

 さらに、その装置開発の各過程でシミュレーションを駆使する。加えて、テクノロジーやノウハウをソフトウェア化して、装置に取り込む。そして、これらを一つに集約し、世界標準の装置に仕上げていく。この背景には、欧米のガチガチの契約社会が色濃く反映されているように思う。

 まとめると、日本の装置メーカーはカスタマーの半導体メーカーごとでカスタマイズすることが多いが、欧米の装置メーカーは世界標準の装置を基本的に1種類だけ開発する。要するに、装置開発において、日本は発散し、欧米は集約するという対照的な傾向にある。これは、日本のシェアが高い装置は液体や流体など形がない材料を扱うのに対して、欧米メーカーは、光や電子ビームおよびプラズマを使う真空装置を扱うことが要因の一つであろう。

 しかし、それだけではない。

日本人と欧米人の発想と行動様式の違い

 日本人と欧米人の装置開発などの差を論じてきた。ここには、日本人と欧米人の発想や行動様式の違いが大きく関係していると考えられる。

 まず、欧米人は、理論が先にある。そして、開発初期に徹底的に議論を尽くして方針を一本化する。その上で、規格、ルール、ストーリー、ロジックをつくる。逆の言い方をすると、欧米人の技術者は手先が不器用で実験が下手である(というより技術者は一切実験をせず、テクニシャンと呼ばれる職種に任せる文化がある)。

 一方、日本人の技術者は、優れた感覚と経験を基に、直感的に手を動かして実験を行う。また、決められた枠組みの中で最適化することを非常に得意としている。しかし、規格やルールを作るのは苦手である。

 このように、日本人と欧米人では、発想や行動様式がまったく異なる。それが、装置などのシェアの高低につながっていると推測できる。

 ここまで、前工程について、日本のシェアが高い(低い)ものについて、そのシェア、分類、なぜそうなるかについて分析を行った。

 次は、後工程/パッケージについて論じる。その前に、3次元パッケージ(以下、3D IC)の時代を迎えて、前工程と後工程/パッケージの間では、パラダイム・シフトが起きていることを以下で指摘する。

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