混載MRAMの書き換えエネルギーを72%削減、ルネサス:IoT用マイコンの低電力化に向け(1/2 ページ)
ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は、スピン注入磁化反転型磁気抵抗メモリ(STT-MRAM、以下MRAM)を省エネルギーかつ短い電圧印加時間で書き換えられる技術を開発した。2021年12月11〜15日に米カリフォルニア州サンフランシスコで開催された「2021 IEDM」で発表されたもの。IoT(モノのインターネット)向けマイコンの混載MRAMに同技術を適用することで低消費電力化を狙う。
ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は、スピン注入磁化反転型磁気抵抗メモリ(STT-MRAM、以下MRAM)を省エネルギーかつ短い電圧印加時間で書き換えられる技術を開発した。2021年12月11〜15日に米カリフォルニア州サンフランシスコで開催された「2021 IEDM」で発表されたもの。IoT(モノのインターネット)向けマイコンの混載MRAMに同技術を適用することで低消費電力化を狙う。なお、今回ルネサスが発表したのはMRAMそのものではなく、混載MRAMに適用するための回路技術である。
さらなる低消費電力化が求められるマイコンと混載MRAMの課題
IoT分野では、エンドポイントの機器に搭載されるマイコンに対して低消費電力化が強く求められている。書き換えに必要なエネルギーがフラッシュメモリよりも小さいMRAMは、特に頻繁に書き換えが発生する用途において、本質的に有利になる。ルネサスは「混載フラッシュメモリに比べ、混載MRAMは、書き換え速度、書き換えエネルギーともに1桁以上向上する」と語る。だが、マイコンにはより高い処理能力も求められており、性能と消費電力のトレードオフを緩和すべく、低消費電力化は依然として大きな課題になっている。
MRAMは、磁気トンネル接合素子の高抵抗状態と低抵抗状態を、データの「1」「0」に対応させて情報の読み書きを行う。ただ、MRAMメモリセルには、印加電圧が高いほど高抵抗状態と低抵抗状態の差(抵抗値の差)が小さくなる性質があり、特に書き換え中は、高抵抗/低抵抗の状態間の判別が難しくなる。
そこで従来、メモリセルの書き換え中に、メモリセルの電流の変化によって書き換え完了を検知し、書き換え電圧の印加を、メモリセルの特性ばらつきに応じて自動的に停止する自己終端書き換え手法が、フラッシュメモリや一部のMRAMで提案されてきた。ただ、前述した通りMRAMメモリセルでは、特性的に書き換え中の状態判別が難しいことや、完了検知回路の不感帯などによる判定電流がばらつくことから、安定した書き換え検知ができないという課題があった。
青い点線は自己終端がうまくいっているもの。高抵抗状態で書き換え電圧を印加し、低抵抗状態に遷移したことがしっかり検知され、電圧印加が停止している。課題となっているのは青い実線で示されているケース。低抵抗状態に遷移した際、メモリセル電流が検出回路の不感帯に入ってしまい、低抵抗状態に入ったことがうまく検知されない。そのため、設定されている最大時間まで書き換え電圧が印加され、無駄なエネルギーが消費されてしまう[クリックで拡大] 出所:ルネサス
こうした課題を踏まえてルネサスが開発した回路技術が、1)スロープパルス方式を用いた自己終端書き換え技術、2)同時書き換えビット数の最適化技術の2つだ。
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