データセンターの設計には汎用性が不可欠:「利用方法の変革」に対応する(2/2 ページ)
Google、Microsoft、Facebookのような大手企業は毎年のように自社のデータセンターを増強しています。これら全ての企業に共通することは、コンピューティングやストレージのあらゆるニーズに対応できるようなデータセンターを設計したいと考えていることです。
システムのパフォーマンスとの関係
データセンターの設置場所は機能とインフラにとっての要ですが、システムのパフォーマンスも同様に重要です。モバイルアプリケーションのバックエンドを支えるデータセンターでは、低遅延で応答する最適化されたシステムが必要です。データセンターの変革において、エッジコンピューティングアーキテクチャによる低遅延の確保が非常に重要視されています。
ハイパースケールのデータセンターにはいくつかの大きなメリットがありますが、企業によっては、エンドユーザーに近い場所にある小規模な施設の方が遅延を抑えられる場合もあります。つまり、これらのシステムの性能は、アプリケーションがネットワークの要求にどれだけ早く応答するかで評価され、大量のメモリや浮動小数点演算は必要ありません。リクエストに対する対応時間がユーザーのSLA(サービス水準合意)を保証する指標になります。
シミュレーション、3Dレンダリング、AI(人工知能)の計算などを必要とする研究部門やエンジニアリング部門では、他とはまったく異なるコンピュータ処理を行います。一般的に、これらのシステムでは、周波数や浮動小数点演算性能においてより高速なコアを搭載しています。より多くのシミュレーション結果がより正確なデータを導くので、複雑なシミュレーションやリアルタイム分析を可能にする大容量のシステムメモリも不可欠です。
このような用途のアプリケーションにはHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)やデータ分析に特化したブレードサーバなどの、高密度なコンピューティングシステムが最適です。複数のGPUシステムを搭載できるのであれば、AIや機械学習(ML)にも最適な選択肢といえるでしょう。逆に、企業資源計画(ERP)や人事(HR)、顧客関係管理(CRM)などのエンタープライズアプリケーションを運用するデータセンターでは、大量のデータを迅速に分析できるシステムが必要になります。この場合は低遅延に特化させる必要はありませんが、正確に、データを常に最新に保つ必要があります。情報の提供を自社のデータセンターに依存している点から、SLAを保証するために、さまざまな数のCPU、メモリ、ストレージ、ネットワークオプションを含むシステムが必要になります。
大事なのは「特定のニーズに合った適切なシステム」の採用
データセンター設計における課題は、システムのニーズとアプリケーション要件との複雑なバランスを保つことです。その解決策としては「全て最高のものをそろえる」という単純なものではありません。例えばプロビジョニングが不足している場合はパフォーマンスのボトルネックや制限につながります。しかし、その一方で、過剰なプロビジョニングの場合は、システムのアイドリングなどを引き起こすためリソースを浪費してしまいます。特定のニーズに合った適切なシステムを採用することが、データセンターのパフォーマンスと効率化を実現させるのです。全体のワークロードを把握し、どこにボトルネックが発生するかを前もって検討することで、アプリケーションのプロファイルに基づいた適切なインフラの選択ができるようになります。
データセンターの設置にはよく地理的な条件が考慮されますが、データの取得/処理に必要な処理能力と最適な場所への配置を考えることが本当の意味で重要になります。大規模な企業やクラウドデータセンターは、大量のデータを処理することができますが、取り扱っているデータに処理が近いほど、アップストリーム、ダウンストリームの通信や応答性全体への影響が強くなります。そのため企業やワークロードごとに、それぞれに適したデータセンターの設計が必要です。
データセンターの設計を要件に関わらず画一的に対応しようとすると、結果的に非効率な運用やコストの無駄を生み出してしまうでしょう。
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