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「IPOはもともとプランA」と孫氏が語るArmの行方期待と課題(1/2 ページ)

ソフトバンクグループ(以下、ソフトバンク)は2022年2月8日、ArmをNVIDIAに売却する契約を解消したことを発表した。このため今後は、Armを株式公開企業として再上場する計画「プランB」に頼らざるを得なくなったようだ。しかし、ソフトバンクの会長兼社長である孫正義氏によると、もともとIPO(新規株式公開)は「プランA」だったと語る。

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 ソフトバンクグループ(以下、ソフトバンク)は2022年2月8日、ArmをNVIDIAに売却する契約を解消したことを発表した。このため今後は、Armを株式公開企業として再上場する計画「プランB」に頼らざるを得なくなったようだ。しかし、ソフトバンクの会長兼社長である孫正義氏は、もともとIPO(新規株式公開)は「プランA」だったと語る。


ソフトバンクグループの会長兼社長、孫正義氏は、決算説明会でArmのIPOについて説明した 出所:ソフトバンクグループ

「最悪の事態引き起こす」と主張していたIPO

 Armは以前、規制当局に対し、「IPOは、最悪の事態を引き起こす可能性がある」と主張していた。だが今、Armとソフトバンクは投資家たちに対して、IPOが事実上の得策であることを納得させなければならないという事態に直面している。両社は現在、「Armが上場すれば、データセンターや自動車などの新しい市場において成功を収められる」として、その根拠を提示しているところだ。

 ここで思い出されるのが、Arm/NVIDIAが2021年12月に英国の規制当局に提出した文書の中で、IPOの潜在的な危険性について詳細に説明していたことだ(関連記事:「NVIDIAによる買収、失敗すればArmは業績低迷か」)。Armは、IPOに反対する根拠として、「Armが上場した場合、データセンター市場の強力な既存企業と戦っていく上での資金源が不十分である。さらに、忍耐力の乏しい資本市場では、短期的な売上高成長と利益性の実現に注力することが求められる。このため、価値を最大化すべくコストを大幅に削減しなければならず、Armが投資や拡張、イノベーションなどを実現していく上で、その能力が阻害される可能性がある」との見解を中心に主張していた。

 英国当局に提出された文書によると、「ソフトバンクは、2019年と2020年初頭にもIPOについて検討していたが、市場から必要なROI(Return On Investment:投資利益率)を確保できないとの判断から、却下するに至った。AppleやQualcomm、AmazonなどをはじめとするArmのライセンシー各社は、急激な売上高成長や利益向上を実現し、市場価値も飛躍的に上昇しているが、一方でArmは近年、売上高が比較的横ばいの状態が続き、コストが増大して利益率が低下するなど、創設30年の公開企業として、さまざまな困難を耐え忍んでいるという状況にある」という。

 ソフトバンクは2016年に、Armを320億米ドルで買収した。これは当時、かなり大胆な行動だと見なされた。孫氏はこの時、「英国とそのエンジニアリング市場において長期的な投資計画を実行していくと同時に、非公開企業であるArmが、もっと積極的に新しい技術分野に投資できるようにしていきたい」と述べていた。

想定外だった猛反発、「半導体業界史上、最大の上場」へと一転

 しかし孫氏は、2022年2月に実施したソフトバンクの決算説明会で、ArmのIPOについて「半導体業界史上、最大の上場を目指す」と述べ、これまでの主張を変更した。

 孫氏は、国際的な規制当局や業界のライバル企業各社が、今回の買収提案に断固として反対したことに驚きを示した。同氏は、「これほど多くの主要プレーヤーや各国規制当局から反対されるとは思っていなかった。NVIDIAも同様に、このような大反対を受けるとは想像すらしなかっただろう」と述べている。

 「通常、独占禁止法違反は、類似製品を手掛けている2つの企業が合併し、独占状態を生み出すという場合に申し立てられる。NVIDIAとArmは全く違うものを作っている。事業の異なる2つの企業の合併が独占禁止法で阻止するというのは、初めてのケースだ」(孫氏)

 ソフトバンクは、NVIDIAがArmの売却先候補として登場する前から、Armを5年後をめどに再度上場することを検討していた。もともとの計画では、製品開発に最長で3年間を費やし、さらにもう1年をかけてその製品をライセンス供与に移行していくつもりだった。孫氏は、「これは、Arm買収計画の始動当初から検討していたことだ」と述べ、ArmのIPOが事実上、最初からプランAだったということを認めている。

 ただし同氏は、ArmのIPOの潜在的価値や、株式公開企業に対するソフトバンクの出資金に関しては言及しておらず、「それほど多く売却するつもりはない。ソフトバンクの出資金については、初期投資家たちの予想利益との間でバランスをとる必要がある(Armの株式全体のうち、SoftBank Vision Fund1(SVF1)が25%を、ソフトバンクが75%をそれぞれ保有している)」とだけ述べている。また同氏は、Armを上場しなければならない理由の1つとして、Vision Fund 1への支払いを上げている他、Arm従業員へのインセンティブや透明性向上の必要性などについても言及した。

 Armは米国で上場する予定で、孫氏は、「最も可能性が高いのはNASDAQだ」と述べた。Armはかつてニューヨークとロンドンの両市場で上場していた。孫氏は、Armの顧客や潜在投資家の多くがシリコンバレーにいることを指摘している。米国株式市場は、一般的に高い評価を提示してくれるだろう。

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