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実は盲点、AIの二酸化炭素排出量を削減する方法は?性能と環境負荷削減を両立(1/2 ページ)

2021年10月31日〜11月12日に英国のグラスゴーで開催された「COP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)」の終了後、民間企業と政府は一様に、気候変動対策の公約を強化し、公共政策と革新的な技術を組み合わせることで、この時代に特徴的な課題の1つに対処しようとしている。

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 2021年10月31日〜11月12日に英国のグラスゴーで開催された「COP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)」の終了後、民間企業と政府は一様に、気候変動対策の公約を強化し、公共政策と革新的な技術を組み合わせることで、この時代に特徴的な課題の1つに対処しようとしている。

 こうした企業の1つがNVIDIAだ。同社が開発したスーパーコンピュータ「Earth-2」は、予測モデルを活用して、今後数十年間に世界中で気候変動がどのように起こるかについて、科学者の理解を支援する。ただ、気候危機への取り組みをAI(人工知能)が支援する世界を想像するのは刺激的ではあるが、AI自体が大量の二酸化炭素を排出するものであるという痛烈な皮肉を避けては通れない。

 例えば、従来のニューラルアーキテクチャで構築された「Transformer」ベースの単一ニューラルネットワーク(2億1300万パラメータ)は、60万ポンド(約272トン)以上の二酸化炭素(CO2)を生成する。これは、平均的な自動車の生涯排出量のほぼ6倍である。

 AIのCO2排出量の削減は、まず問題の範囲を理解することによってのみ可能となる。幸いにも、地球の健全性を犠牲にすることなくAIイノベーションを実現するために、技術業界のリーダーが講じることができる手段はある。ハードウェアやモデルの複雑さの見直しから、トレーニングと推論の両方の段階で必要な処理の削減まで、環境に優しいAIイノベーションの実現に向けた対策には、以下のようなものがある。

電力を大量消費するモデルの排除

 AIモデルが機能するには膨大なエネルギーが必要で、消費電力はモデルの精度に比例して増大する。AIモデルが大きければ大きいほど(一般的には、予測精度が高くなればなるほど)、より多くのエネルギーが必要になる。

 この膨大なエネルギー消費について分かりやすく説明すると、2020年時点で、六面立体パズルを完成させるアルゴリズムに必要なエネルギー量は、原子力発電所3基が1時間に生成するエネルギーと同等だった。この例は外れ値である(AIモデルは、単に六面立体パズルを完成させるよりも現実的な問題の対処に焦点を合わせる傾向がある)とはいえ、全体的な傾向を示している。AIモデルの規模と精度の高まりと共に、環境に対する悪影響も大きくなっている。

 この例ほど奇抜ではない統計を提示すると、推論を行うデータセンターは2018年時点で毎年およそ200テラワット時(TWh)を使用しているが、これは、国によっては、国全体のエネルギー消費を上回る量である。

 AIコンピューティングでは最近まで、ほとんどの電力がトレーニング段階で消費されていた。しかし、AI製品を商用化する企業が増えるにつれて、より多くのエネルギーが推論に充てられるようになると予想される。

 この傾向が加速すれば、AIに関連するCO2排出量は、業界が対策を講じない限り、指数関数的に増加すると予想される。

 さらに、AIモデルの複雑さと規模は増大し続けていて、2012年に26Mバイトだったモデルサイズは、2019年には1Tバイトに拡大している。モデルサイズの拡大に比例して、求められるコンピューティング能力も増大している。

 気候変動そのものと同様に、AIは私たちの日常生活にますます、不可逆的に組み込まれている。こうした状況においてAIの先駆者たちが向き合わなくてはならないのは、「どうすれば複雑なAIをより環境に優しいものにできるのか」という課題だ。

 幸いにも、この問題に関係する業界内で問題意識が高まっている。MLPerfは2021年初めに、AIプロセスの性能ベンチマークを補完する新しい技術と指標のセットである「MLPerf Power Measurement」を導入した。これらの指標の導入によって、AIモデルとハードウェアの両方の性能を報告および比較する際に、遅延の追跡だけではなく、エネルギー消費についても考察される、大いに必要となる基準が確立されることになった。

 AIのCO2排出量を測定して追跡できるようになったことは、望ましい方向への一歩だが、業界全体で実施すべきことは他にもたくさんある。幸いなことに、すぐに実施できる対策がいくつかある。

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