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ますます存在感と影響力を高めるRISCのいまArmとRISC-V(1/2 ページ)

高額なM&A取引/提案が相次ぎ、大規模/小規模メーカーによるRISCアーキテクチャの活用が進むなど、半導体業界はかつてないほど活気に満ちた状況にある。この業界において現在、存在感と影響力を高めながら成長の可能性を後押ししているのが、RISCだ。

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、発生から約2年が経過した現在も、多くの業界に影響を及ぼしている。初期の頃の“ステイホーム”によって影響を受けた業界としては、航空旅行業やホテル、エンターテインメント、小売業などの他、製造業をはじめとするさまざまな労働集約型の分野が挙げられる。中でも特に深刻な打撃を受けた半導体製造については、広く報道されているように、現在も自動車業界を中心とした半導体不足に見舞われている。2021年に行われた調査によると、半導体不足の影響による自動車業界の売上高損失は、2100億米ドルに達するという。

 米国は、半導体不足に対応しながら成長計画を実行すべく、1500億米ドルを超える民間/公的資本を投入することによって半導体製造の拡大を実現していきたい考えだ。半導体業界では現在、高額なM&A取引/提案が相次いでいる。また、大規模/小規模メーカーによるRISCアーキテクチャの活用が進んでいる他、最も影響を受けた関係当事者たちが地政学的リスクやサプライチェーン関連のリスクを軽減するためにさまざまな取り組みを推進するなど、かつてないほど動的な状況にある。

 このような業界のダイナミズムの大半を占めているのは、デジタル化やモビリティといったマクロレベルの動向ではあるが、現在、存在感と影響力を高めながら成長の可能性を後押ししているのが、RISCだ。簡素化を実現した設計により、幅広いアプリケーションに向けて優れた価格性能を発揮する。バリューチェーンの参加メンバーたちは、ArmやオープンソースのRISC-Vなどがライセンス供与する命令セットを利用することで、リソースや受託製造へのアクセスを入手でき、IntelやNVIDIAなどといった既存プレーヤーたちとの競争が可能になる。

 なお、NVIDIAは先日、Arm買収計画を断念したところだ。

拡大続けるRISCアーキテクチャの利用

 RISCベースのアーキテクチャは、こうした新しいシナリオの中でも特に重要視されている。携帯電話や小型デバイス/民生機器メーカーはこれまで長年にわたり、RISCプラットフォームを利用することで、IntelやAMDが提供するCISCベースのソリューションよりも魅力的な価格や性能、エネルギー効率を実現してきた。RISCベースのソリューションは現在、サーバでの利用も増え始め、その原点となっていた小型デバイスの枠を超えようとしているところだ。


RISCベースのアーキテクチャによるソリューションは、小型デバイスの枠を越え、サーバーでの利用にまで広がっている[クリックで拡大] 出所:Altman Solon

 Intelが最近、RISC-Vメーカーをサポートすべく10億米ドルの資金を投じると発表したことから、RISCは現在さらに大きな注目を集めている。Intelにとっては競争上必要な動きだったのかもしれないが、同社は今や、RISC-V市場における確固たる足掛かりを築き、RISCベースのソリューションを受託製造側でサポートすることによって、ビジネスを勝ち取るためのチャンスを拡大しつつあるといえる。

 世界的な主要テック企業は既に、こうした方向へと向かっている。例えばMeta(旧Facebook)は、約10年前から自社のデータセンターでArmを採用している。また、Amazonは2018年末に、ArmのサーバプロセッサライセンスをベースとしたAmazon Web Services(AWS)クラウドサービス「AWS Graviton」の提供を開始した。そしてMicrosoftは、サーバでの使用に向けてArmベースの設計開発を進めていると報じられている。またRISC-Vについても、IntelがSiFiveに投資をしているように、大手メーカーの投資が増加し、導入が加速すると期待されている。さらに、民間のベンチャーキャピタルからの投資も増えているようだ。

 RISC設計を行っているのは、PCやソフトウェア、クラウドプラットフォーム関連の顧客企業だけではない。IntelやAMD、NVIDIAなど、既存のIDM(垂直統合型デバイスメーカー)やファブレスメーカーが、RISC設計をうまく活用することによって製品の性能向上を実現しているのだ。これらのメーカーが自社開発のソリューションを好むのは、明らかに製品ブランドや金銭面での理由からだろう。

 だが、さまざまなユースケースにおいてRISCが価値を発揮しているということは、ほとんどのメーカーがこのアーキテクチャを採用していることからも分かるだろう。RISCベースのアーキテクチャの性能が向上して導入が進み、それがファブレスメーカーの成長戦略と結び付くことで、プロセッサ分野での競争を繰り広げることに対するハードルが低くなっているのだ。


RISCアーキテクチャはハイパースケーラの後方統合を促進し、既存メーカーは重要な戦略的転換を行っている(図はIntelのSiFiveへの投資や、NVIDIAによるArm買収計画断念の発表前に作成されたものだが、一般的な傾向を示すために掲載している)[クリックで拡大] 出所:Altman Solon

 RISCの導入拡大による利益を享受しているのが、TSMCやSamsung Electronicsなどのファウンドリーである。これらのメーカーは長年にわたり、IDM/ファブレスの両方の顧客企業が求める生産量にうまく対応してきたが、現在では自社のキャパシティーを超える需要に対応できていない状況にある。Intelは2021年初頭に、ファウンドリーサービスを提供する計画を発表しているが、このことから、シリコンバレーの大手テックメーカーである同社が、受託製造分野にチャンスを見いだしているということが分かる。

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