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NVIDIAのハッキング被害は、「国家規模の災害」中国のAI/GPU競合の利益となる可能性(1/2 ページ)

NVIDIAは、ハッカー集団にデータを盗まれ、データ身代金を要求される被害にあったことを明らかにした。米国ワシントンD.C.の研究グループによると、その脅威アクターはまだ特定されていないが、中国国内のNVIDIAの競合メーカーを支援している可能性があるという。

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 NVIDIAは、ハッカー集団にデータを盗まれ、データ身代金を要求される被害にあったことを明らかにした。米国ワシントンD.C.の研究グループによると、その脅威アクターはまだ特定されていないが、中国国内のNVIDIAの競合メーカーを支援している可能性があるという。

パスワードや回路図、ドライバ、ファームウェアなど漏えい

 NVIDIAは2022年3月、ハッカー集団に機密情報を盗まれたとしている。報道によると、サイバー犯罪組織「Lapsus$」が、NVIDIAのパスワードや回路図、ドライバ、ファームウェアなどの情報を漏えいし、さらに、要求が満たされない場合は他の情報も流出させると脅迫しているという。ArsTechnicaによると、その要求の中には、NVIDIA製ゲーミングカードの暗号通貨マイニング性能制限を解除し、GPUドライバをオープンソース化することなども含まれているという。

 NVIDIAによると、2022年2月23日(米国時間)にサイバー攻撃を受けたことが分かったという。同社の広報担当者は、米国EE Timesとの電子メールのやりとりの中で、「われわれは、攻撃を受けた直後に、社内ネットワークのさらなる強化や、サイバーセキュリティインシデント対応の専門家の手配、法執行機関への通知などの対応を行った」と述べる。

 NVIDIAは、「今のところ、当社の社内環境にランサムウェアが展開されたという証拠も、ロシア/ウクライナ紛争に関連した攻撃であるという証拠もない。脅威アクターは既に、当社システムから盗み出した社員認証情報や機密情報の一部を、オンライン上で漏えいさせている」と述べる。

 「現在、情報の分析を進めているところだが、今回の攻撃によって、当社の事業や顧客企業への対応に混乱が生じることはないとみている」(NVIDIA)

 NVIDIAはGPUを武器に現在の地位を築き上げてきた。分析プラットフォームCompaniesMarketCapによると、NVIDIAの時価総額は現在約5000億米ドルで、世界第9位だという。同社のGPUは、ロボットや自動運転車などのさまざまなアプリケーションに搭載されているAI(人工知能)システムを推進する、原動力になっている。

 米国ジョージタウン大学ウォルシュ外交学院(Walsh School of Foreign Service, Georgetown University)の政策研究機関である「Center for Security and Emerging Technology(セキュリティおよび新興技術センター)/以下、CSET」は、2020年3月10日(米国時間)付のレポートで、「今回のハッキングにより、中国のAI/GPU関連のライバル企業が、NVIDIAに追い付く可能性がある」と指摘する。

 今回のハッカー集団については詳細が明らかになっていないが、”usual suspects(いつも名が上がる容疑者)”に疑いの目が向けられているようだ。

 さらにCSETは、「ハッカーがNVIDIAのツールへのアクセスを入手したことにより、中国のAI/GPUメーカーが、最先端チップを独自開発して米国の競合メーカー各社に追い付けるようになる可能性がある」と述べている。

 「今回のハッキングは、半導体製造において使用する重要な知的財産や専有ツールを保有するNVIDIAに対し、重大な問題を引き起こす恐れがある」(CSET)

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