米半導体支援策、成功には組み立て/テスト強化が必須:IC基板分野は「アジアに20〜25年遅れ」(1/3 ページ)
米国は現在、エレクトロニクス業界が全盛期だった頃の半導体製造を復活させようとしているが、業界専門家は、半導体チップの組み立て/テストメーカー各社による基本的な国内エコシステムを再構築しない限り、その取り組みが成功する見込みはないとみている。
「組み立て/テスト分野」放置の懸念
米国は現在、エレクトロニクス業界が全盛期だった頃の半導体製造を復活させようとしている。だが、業界専門家によると、半導体チップの組み立て/テストメーカー各社による基本的な国内エコシステムを再構築しない限り、その取り組みが成功する見込みはないだろうという。
米国の議員たちは、米国半導体業界の復活をサポートするための一連のインセンティブとして、520億米ドルの資金投入を承認しようとしている。しかし、「このような金銭的なサポートの大半が、それほど支援を必要としていない半導体メーカーに割り当てられるだけで、減速の一途にある米国の組み立て/テスト分野が放置されるのではないか」という懸念が生じている。
米国電子回路協会(IPC)のチーフテクノロジストを務めるMatt Kelly氏は、米国EE Timesのインタビューに応じ、「インセンティブプログラムについては、現在議論が進められているところだ。単に業界を人工的にサポートするだけでは、インセンティブがなくなった時に、計画そのものが全て消滅してしまうのではないかということが大いに懸念されている。残念ながら、少なくとも私の見解では、現状ではそうなっている」と述べている。
IC基板の製造拠点、北米にはゼロ
米国のエレクトロニクス業界における最大のギャップの1つとなっているのが、IC基板である。IC基板は、自動車やIoT(モノのインターネット)、5G(第5世代移動通信)などの用途に向けた省スペース型の低消費電力デバイスで使われる、プリント基板の半導体密度を高めることが可能だ。
Kelly氏は、「北米にはこれまで、IC基板の製造拠点が1つも存在しなかった。このため、“復活させる”のではなく、“手に入れる必要がある”という話になる」と述べる。
インドのコンサルティング企業Mordor Intelligenceのレポートによると、IC基板市場は、2020年の77億米ドル規模から、2027年には122億米ドルまで拡大する見込みだという。現在では、フットプリントの削減や高性能化、低消費電力化に対する要望の高まりを受け、半導体チップ同士を接続したり、半導体チップを自動車やモバイル、IoTデバイスなどのプリント基板に接続したりするための材料へと移行が進んでいる。
実質的に全ての基板メーカーが、アジアに拠点を置いている。主要サプライヤーとしては、台湾のUnimicronやASE Group(以下、ASE)、日本のイビデン、中国のSCCなどが挙げられる。Mordor Intelligenceのレポートによれば、Unimicronは2022年に、高性能フリップチップ基板の研究開発および生産能力拡大に向けて、7億米ドルを超える資金を投じるという。
Kelly氏は、「米国はIC基板の分野において、アジアに20〜25年もの後れを取っている」と述べる。
「IC基板市場は力強い成長を遂げているが、その一方で、一部の企業はロジックと高帯域メモリの間の接続を向上させるために複数の再配線層(RDL:Redistribution Layer)を備えたシリコンインターポーザーを使用しており、技術的な課題に直面している。RDLを備えたFOoS (Fan Out On Substrate)を使用するメーカーもある。ASEのような、FC-BGA(flip-chip ball grid array)の製造ラインを稼働させている半導体組み立てメーカーには、基板だけでなく、RDL用のウエハーバンビングや生産キャパシティーも必要になる。しかし、ウエハーレベルのファンアウトパッケージング(FOWLP:Fan Out Wafer Level Packaging)グループの方が、RDLレベルまでのプロセスステップが少ない。このため、業界は現在、ファンアウト技術への移行を進めているところだ」(Kelly氏)
米国パデュー大学の教授であり、半導体パッケージング技術開発に取り組んでいるCarol Handwerker氏は、「米国に必要なのは、最先端の技術開発に投資して、エレクトロニクス業界におけるリーダーシップを維持することだ」と述べる。
「米国にとって将来的に必要なのは、新しい技術進展である。しかしそれは、昔のように簡単なことではない。現在のヘテロジニアスインテグレーションでは、パッケージングや組み立て、テストなどがどこで停止するのか、また半導体チップがどこで停止するのかを判断することは難しい」(Handwerker氏)
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