3D DRAMからCXLメモリまで、Micronの見解を聞く:1βでは広島が大きな役割を果たす(1/2 ページ)
2022年8月、米国の半導体支援の法案「CHIPS法(正式名称:CHIPS and Science Act)」の可決に伴い、400億米ドルを投じて米国での生産活動を拡張すると発表したMicron Technology(以下、Micron)。同年9月1日(米国時間)には、米国で20年ぶりにメモリ工場を建設する計画も発表した。EE Times Japanは、Micronのモバイルビジネス部門でシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるRaj Talluri氏および、Micron本社に取材し、市場動向や新しいメモリ技術に対するMicronの見解について聞いた。
2022年8月、米国の半導体支援の法案「CHIPS法(正式名称:CHIPS and Science Act)」の可決に伴い、400億米ドルを投じて米国での生産活動を拡張すると発表したMicron Technology(以下、Micron)。同年9月1日(米国時間)には、米国で20年ぶりにメモリ工場を建設する計画も発表した。
EE Times Japanは、Micronのモバイルビジネス部門でシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるRaj Talluri氏および、Micron本社に取材し、市場動向や新しいメモリ技術に対するMicronの見解について聞いた。
2023年には市場が回復基調に
――NAND型フラッシュメモリとDRAMの直近の市場動向についてお聞かせください。
Raj Talluri氏 現在の市況は、需要が減速していることから、やや過剰供給となっている。COVID-19による中国のロックダウンや、ウクライナ侵攻をはじめとした世界的な情勢不安から、スマートフォンの需要が低減していることが、需要減速の主な要因だ。ただし、来年(2023年)にはNANDフラッシュ、DRAMともに市場が回復基調に向かうとみている。
――Micronの最新のNANDフラッシュとDRAM製品について教えてください。
Talluri氏 現在、モバイルビジネス部門のNANDフラッシュにおいては、176層品が主力になっている。当社の176層NANDフラッシュは、フラグシップのスマートフォンのみならずさまざまな電子機器で使われ始めている。2022年7月には、232層NANDフラッシュの量産を開始した。2023年には、232層品を搭載したスマートフォンが市場に投入される見込みだ。NANDフラッシュについては、記憶密度の向上とコストの低減という観点から、当面は積層数を増やすというのがトレンドになるだろう。
DRAMでは、1α(アルファ)ノードで製造したLPDDR5X DRAMのサンプル出荷を開始している。データ転送速度が8.533Gビット/秒(bps)と、前世代のLPDDR5 DRAMと比較して最大33%高速になっている。
――DRAMについては、1β(ベータ)ノードの生産を2022年内にも開始する予定です。続く1γ(ガンマ)ノードではEUV(極端紫外線)リソグラフィ技術を導入し、2024年の生産開始を目指していますね。
Talluri氏 DRAMの開発も積極的に進めている。DRAMではノードが進むたびに、さらなる高速化、低消費電力化が求められる。コストも重要なので、これらのバランスを最適化することがポイントだ。グラフィックスからモバイル、車載、HBM(High Bandwidth Memory)までそろえているのがMicronの強みで、いかに高性能なDRAMを、いかに速く市場に投入するかに常に注力している。
1βノードをはじめ、DRAMの生産では、広島工場が大きな役割を果たす。広島工場をはじめMicronの日本法人にはメモリ開発に30年以上携わってきたエンジニアが数多くいる。メモリ開発では、経験が極めて重要になるので、こうした人材がいるというのも当社の強みだ。
DRAMの3次元化
――NANDフラッシュは積層という道を見つけましたが、DRAMの3次元(3D)化についてはいかがでしょうか。Micronの見解をお聞かせください。
Micron 3D DRAMは、DRAMのスケーリングを継続させるための、次のステップとして議論されている。3D DRAMの実現に向け、製造装置や高度なALD(原子層堆積法)、選択的蒸着、選択的エッチングの開発から、アーキテクチャの議論まで、業界全体で活発な研究が行われている。
一方で、コスト面や技術面で大きな課題が残っているのが現状だ。技術的な課題は、デバイスや構造、製造プロセス、製造装置、材料、アーキテクチャまで幅広い分野にまたがって存在する。プレーナ型から3D DRAMに移行するには、あらゆる分野でのイノベーションが必要だ。さらに、そうした移行は、DRAMスケーリングのロードマップのコスト曲線と性能が交差するポイントで実現される必要がある。
業界はプレーナ型でのスケーリングを継続し、DRAMのロードマップを前進させるためのアプローチを見いだしている。加えて、新しいメモリアーキテクチャの開発も進んでいることから、システムにおけるDRAMの役割も変化しており、プレーナ型をより長く維持できるようになる可能性もある。
現時点で、メモリメーカーは、DRAMのスケーリングを維持すべく、変曲点が来ることを見越して、(プレーナと3D化の)両方に投資している。ノードが進むごとにDRAMのスケーリングが困難になっているのは確かだが、少なくとも今後数年間は、従来の標準的なスケーリングが続くのではないか。
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