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老後を生き残る戦略として「教祖(仮)」になってみた「お金に愛されないエンジニア」のための新行動論(7)(2/10 ページ)

前回に続き、老後の生き残り戦略の一つとしての信仰を考えてみます。今回、私は「教祖(仮)」となり、「教祖ビジネス」についてさまざまな角度から検討してみました。

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「教祖になること」は、インスタントラーメンを作るよりも簡単

 我が国は宗教の自由を保証しています(憲法20条)。誰が、どのような宗教を立ち上げようとも、全く構いませんし、今日から、教団の教祖を名乗ってもいいです。信徒を集めて集会をしても、誰からも文句を言われることはありません ―― 日本国の法律に抵触せず、かつ、公序良俗に反しない限り。

 具体例で言えば ―― 例えば「反ワクチン教団」の設立は100%合法です。その主張をするために、ワクチン接種会場の前で抗議の声を上げるのも、(業務妨害と認められない限りは)問題になりません。しかし、ワクチン接種会場で暴れて、ワクチン接種の業務妨害するのは100%違法で、現行犯逮捕の対象となります。

 つまり、宗教団体の教祖になることは、インスタントラーメンを作るより簡単であるということです。信徒は、「エア信徒」(自分の頭の中にいる信徒)でO.K.です(宗教法人法第1条)。

 ところが、「宗教団体」を「宗教法人」にするのは、簡単ではありません。宗教法人とは、国家から人格的な権利を与えられたものです。法人になれば、宗教団体の名前で裁判を起こすこともできるし、私有財産を持ったり、利益が出ても納税の義務を免除されたり、各種の特権を得ることができます。

 法人格を得るということは、国家に対して、出生届けを出して、戸籍登録をするようなものです。一度、宗教法人として登録されたら、その後は「人」として取り扱われるのですから、その内容は簡単に変更できません。そして「人」としての権利と義務が発生します。

 ちょっと横道に逸れるのですが、最近、「統一教会(世界基督教統一心霊教会)」から「世界平和統一家庭連合」への名称変更手続きが承認された理由について取り沙汰されておりますが、これは当然のことなのです。

 「人」が戸籍登録した名前を変えるには、「家庭裁判所」において、正当な事由があると判断をされた場合に限られています。犯罪者が身分を隠匿することを目的とした改名が、「正当な事由」にならないことは当たり前です。

 以下は、ある方が情報公開請求を行い、その教団が提出し、行政が認可した書類の写しです(Twitterからコピペさせて頂きました)。

 宗教法人の名称の変更手続きは、裁判所の判断を必要とせず、上図の(1)(2)のような手続きで実施できるようです。が、その変更理由については、黒塗りにされていて公開されていません。

 しかし、このケースは、明らかに「公益上特に必要があると認められる」(情報公開法第7条)に該当すると思いますので、この原稿を書き上げたら、私も、情報公開請求の手続きを取ってみたいとと思います*)

*)私も、これまで2回ほどやっていますが、結構簡単で、手数料も安価(300円)です)。結果は、私のブログにてご報告します。

 閑話休題。

 前述した通り、あらゆる宗教団体は、法人登録などしなくても、宗教活動を自由に行うことができます(宗教法人法第1条)が、多くの宗教団体は、法人登録を試みます。

 法人登録をするということは、宗教団体が国家の管理下に置かれるというデメリットにもなりますが、それと同程度、あるいはそれ以上のメリットがあるからです。

 一言で言うと、「税金と法律で圧倒的に優遇してやるから、おまえ(の教団)が何をやっているのか全部見せろ」という、トレードオフの関係です。

 法人登録しなければ、一般法が適用されます。教団への財産譲渡や献金には、当然、贈与税が適用されます(乱暴な理解ですが、『贈与したお金の半分を国に取られる』、というイメージです)し、法人登録をしていない寺院には、お正月のお賽銭ですら、税収の対象になるはずです。

 私が、一介のサラリーマンではなくて、ベンチャーを立ち上げて成功したお金持ちになっているのなら、宗教法人を立ち上げて、自ら教祖となって、嫁さんと長女と次女に、教祖を引きつがせることを考えると思います ―― まあ、もし私がお金持ちなら、この連載自体(「お金に愛されないエンジニアのための新行動論」)が存在しなかったはずですし、彼女らは『面倒くさい』といって、教祖となることを拒否すると思いますが。

 まあ、この程度の脱法行為は、当然、管轄省庁は、当然に想定していますし、実際に、相続逃れの遺贈は、過去にいくつも摘発されています。

 そもそも、宗教団体の法人登録は、かなり面倒なのです。登録前に、宗教団体としての活動実績が必要とされるからです。

 まずは登録申請から遡って3年間程度*)の活動実績を報告しなければなりません。その宗教団体が、実体を伴って、宗教活動を行っているという事実が必要で、まず、礼拝の施設を備える神社、寺院、教会、修道院などの不動産が「現存している」ことを示す必要があります。

*)ちなみに、イエス・キリストの布教活動も実質3年間程度だったそうです(ローマ帝国の処刑によって強制打ち切り)。

 さらに、申請書類に記載できる程度に明文化された教義があることが必要です。『みんなで幸せになる』程度の内容では全く足りないです。

 また、日頃から儀式行事が行われているという証拠も必要です。寺院のWebサイトを見ていたのですが、月に一度は大きなイベントがあり、月単位の定例イベントがある、という程度のアクティビティーは必要そうです。

 信者の教化育成の実体も必要です。ただ、その教化の内容には、(原則として)国家は踏み込めませんが、暴力を伴う活動(テロリズム)や、信徒から寄進を義務化するような教化は、公序良俗の観点から弾かれると思います(当然ですが)。そして、門徒名簿や財産目録が存在していることも必要です。役員については名簿や目録の開示が必要ですが、信徒は不要です。

 詳しくは、「宗教法人運営のガイドブック - 文化庁」を御参照ください

 特に、この2ページ目の、「1.宗教法人の基本理念」の(4)の「性善説」について、今一度、考えたいと思います。

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