円安はもはや国内電機にとって追い風ではない、電機大手8社22年度上期決算総括:大山聡の業界スコープ(59)(1/4 ページ)
2022年11月11日に東芝の2022年3月期(2022年度)上半期決算が発表され、大手電機8社の決算が出そろった。急速に円安が進んだ中で、増益の追い風を受けた企業がほとんどないという実態に、個人的にはやや驚きと失望を感じている。ここでは各社の注目すべき点を紹介しながら、今後の見通しについて述べてみたい。
2022年11月11日に東芝の2022年3月期(2022年度)上半期決算が発表され、大手電機8社の決算が出そろった。
急速に円安が進んだ中で、増益の追い風を受けた企業がほとんどないという実態に、個人的にはやや驚きと失望を感じている。ここでは各社の注目すべき点を紹介しながら、今後の見通しについて述べてみたい。
上方修正に力強さを感じる日立製作所
日立製作所の2022年度上期業績は、売上高5兆4168億円(前年度比5841億円増)、調整後営業利益3931億円(同206億円増)、当期利益1725億円(同1499億円減)であった。純利益の減少は、リスク分担型企業年金制度への移行、日立エナジーにかかるのれん代減少による損失、前年同期に計上した海外家電事業売却益がなくなったことなどが影響しており、特にネガティブ要因はない。
デジタルシステム&サービス部門は、Lumada事業が堅調に推移して増収だったが、プロジェクトコストの上昇もあり、収益はほぼ横ばいだった。グリーンエナジー&モビリティ部門は、為替影響や日立エナジー・鉄道システムが堅調に推移し、増収増益だった。コネクティブインダストリーズ部門は、海外家電部門の売却があったにもかかわらず、計測分析システム事業(日立ハイテク)やビルシステムBUが好調で、増収増益だった。オートモーティブシステム部門は、為替の影響で増収だったが、半導体不足や中国ロックダウンによる自動車メーカーの減産、原材料の高騰などで減益になった。日立建機は、部品サービスの増加や為替の影響がプラス要因だったが、国内外の需要の低迷や鋼材価格の高騰などがマイナスで、売り上げも収益も横ばい、日立金属は、為替の影響やコスト削減施策などで増収増益になった。
2022年度の通期業績予想は、売上高10兆4000億円(前年比1354億円増、前回予想比5500億円増)、調整後営業利益8770億円(同216億円増、同320億円増)、当期利益6,000億円(同165億円増、前回予想と同額)とし、計画を大幅に上方修正した。収益体質も着実に改善しており、全体的にポジティブな印象である。
インフラシステム以外すべて減益の東芝
東芝の2022年度上期業績は、売上高1兆5952億円(前年度比488億円増)、営業利益27億円(同423億円減)、当期利益1007億円(同409億円増)であった。東芝キャリア社などの有価証券売却益があったため、当期利益は前期を上回った。
エネルギーシステムソリューション部門は、発電システム、送変電/配電などの需要が好調で増収だったが、燃料費や輸送費の高騰で減益になり、赤字を計上した。インフラシステムソリューション部門は、公共インフラ、鉄道・産業システムいずれも堅調で増収増益だった。ビルソリューション部門は、国内昇降機の需要減に加え、空調事業を連結から除外した影響もあり、減収減益となった。リテール&プリンティングソリューション部門は、為替の影響などで増収だったが、のれんの減損などで減益となった。デバイス&ストレージソリューション部門は、半導体が増収増益だったが、HDDの需要減が大きく、全体で減収減益になった。デジタルソリューション部門は、官公庁、民間向けシステムが好調だったが、中部東芝エンジニアリング社売却の影響で売り上げも収益もほぼ横ばいとなった。
2022年度通期業績予想は、売上高3兆3500億円(前年比130億円増、前回予想比500億円増)、営業利益1,250億円(同339億円減、同450億円減)、当期利益1900億円(同47億円減、同100億円減)としている。インフラシステムソリューション以外の全部門が減益であり、全体的にはネガティブな印象である。
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