新たな局面を迎えつつある新興メモリ:FRAMとReRAMに高い注目度(1/3 ページ)
新興メモリが、新たな局面を迎えている。しかし、これまでの数年間に、同分野の成長に貢献するような知名度の高い相変化メモリ(PCM)は現れていない。【訂正あり】
新興メモリが、新たな局面を迎えている。しかし、これまでの数年間に、同分野の成長に貢献するような知名度の高い相変化メモリ(PCM)は現れていない。
Intelは、PCMベースの「3D XPoint」メモリ「Optane」の製造を停止することを発表した。Coughlin AssociatesのThomas Coughlin氏とObjective AnalysisのJim Handy氏は、「Emerging Memories Enter Next Phase(新興メモリが新たな局面を迎える)」と題する年次レポートを完成させたタイミングでその発表を聞いたため、土壇場でレポートを修正することになった。
Handy氏は、米国EE Timesのインタビューの中で、「Optaneが消滅しようとしているのに、われわれはレポートの中でOptaneについて大きく取り上げていた」と述べている。
Coughlin AssociatesとObjective Analysisとの共同年次レポートの要点は、Optaneに関する部分を除くと、「新興メモリの次なる段階は、Samsung ElectronicsやTSMC、GlobalFoundriesなどの大手ファウンドリーが、ReRAM(抵抗変化型メモリ)またはMRAM(磁気抵抗メモリ)のいずれかを搭載した生産部品を出荷する」ということになる。
Handy氏は、「われわれとしては、このような分野から大半のビジネスが生まれると考えている。新しい組み込みメモリは、ReRAM/MRAMが、MCUやASIC、FPGAなどのデバイスに搭載されることによって成長がけん引され、主にNOR型フラッシュメモリ(以下、NORフラッシュ)の代替として使われるだろう」と述べている。
NORフラッシュは、28nmプロセス以下の技術と連携できないために限界に達していて、簡単に新興メモリと置き換えることができる。また低消費電力アプリケーションは、多くの新興メモリ向けとして最適だ。
非常に優れた新興メモリの一例として挙げられるのが、低密度でニッチなニーズを満たすことが可能なFRAM(強誘電体メモリ)である。Infineon Technologies(以下、Infineon)がこれを宇宙分野で採用しているのは、放射線耐性が優れているためだ。同社が2022年初めに発表した2MビットのSPI(Serial Peripheral Interface)FRAMは、「宇宙産業初」(同社)の放射線耐性を強化した製品(Rad-Hard製品)である。FRAMは放射線耐性の他にも、動作中のエネルギー消費量が低いことから、電力が貴重とされる宇宙分野向けとして理想的だ。また、不揮発性メモリのEEPROMやシリアルNORフラッシュと比べると、書き込み性能が非常に優れている。
【訂正:2022年12月27日15時10分 当初、「2022年初めに発表した2MバイトのSPI(Serial Peripheral Interface)FRAM」としていましたが、正しくは「2Mビット」です。お詫びして訂正いたします。】
自動車/宇宙分野向けで注目されるFRAM
Infineonはつい最近、8Mビット/16MビットのF-RAMメモリ「EXCELON」を発表した。次世代の車載および産業システムの不揮発性データロギング要件に対応することが可能だという。こうした分野は、宇宙空間と同様に動作環境が過酷なため、特別な防護措置によってデータ損失を防止する必要がある。Infineonの自動車部門でRAM製品ラインの責任者を務めるRamesh Chettuvetty氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「現在、オートメーションの増加とコネクテッドセンサーの急速な成長によって、データロギング要件が増大しているが、このような最新型のFRAMは、それに対応する上で必要とされる業界トップの高密度を提供することが可能だ」と述べている。
InfineonのFRAM分野への投資は、かなり前までさかのぼるが、その要因の一つにCypress Semiconductorの買収がある。Chettuvetty氏は、「新興メモリの魅力としては、低消費電力や放射線耐性の他にも、データの信頼性を提供できるという点がある。このため、自動車業界のような必要条件が厳しい分野のミッションクリティカルなデータロギング向けとして理想的だ。FRAMは、摩耗しやすい既存のNORフラッシュに取って代わる理想的な製品である。しかし、フラッシュは安価であるため、データロギングが必須要件ではない場合には、今もまだ好んで使われる場合が多い」と述べる。
現在、ロギングによって生成されるデータ量が増大している中、信頼性要件の有無に関係なく、低密度FRAMの小規模市場が相当数存在する。しかしFRAMにとって、最後の未開拓分野が宇宙分野であるなら、次なる未開拓分野としては“高密度”が挙げられる。
Chettuvetty氏は、「既存の技術では、ある種の記憶密度の限界が確実に存在する」と指摘する。同氏はその詳細については説明しなかったが、Infineonは現在、さまざまな種類の材料を検討することにより、16Mビット超の密度を実現可能なFRAMの開発に取り組んでいるという。
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