RISC-Vコア、「出荷コア数で2024年には主流へ」:業界要求はオープンスタンダード
米国SiFiveは、RISC-Vの現状やSiFiveにおける今後の取り組みなどを紹介した。この中で、「RISC-Vの立ち上がりは早く、2024年にはRISC-Vの出荷コア数がArmを上回り、逆転するのではないか」との見通しを明らかにした。
日本市場でも、大学や研究機関との連携を強化
RISC-VプロセッサコアIPを手掛ける米国SiFiveは2022年12月26日、東京都内で記者懇談会を開催し、RISC-Vの現状やSiFiveにおける今後の取り組みなどを紹介した。この中で、「RISC-Vの立ち上がりは早く、2024年にはRISC-Vの出荷コア数がArmを上回り、逆転するのではないか」との見通しを明らかにした。
SiFiveは、2022年10月に日本法人「SiFive Japan」を設立し、日本と韓国市場での活動を本格的に始めた。今回は、SiFiveの共同設立者であり主任設計技術者を務めるKrste Asanovic(クルスト・アサノヴィッチ)氏が来日し、RISC-Vの優位性などについて語った。Asanovic氏は、オープンソースISA(命令セットアーキテクチャ)「RISC-V」財団の会長も務めている。
RISC-Vが選択される理由についてAsanovic氏は、「業界がオープンスタンダードのビジネスモデルを求めている。RISC-Vに移行すれば、従来のISAに戻ることはない」と話す。SiFive以外にもAndes TechnologyやAlibabaなど複数のRISC-Vコアベンダーが存在し、各社が競争し合うことでRISC-Vコア自体も性能や機能面で進化を続けることになる。
また、用途に特化した新たなRISC-Vコアが登場する可能性があり、ユーザーにとってもコアの選択肢が広がる。これによって、1つのアーキテクチャでさまざまな用途に対応することが可能になるという。
他のISAに比べRISC-Vの強みとしてAsanovic氏は、「同等性能で小型、低消費電力」「シンプルなコードサイズ」「複雑な命令がない」「特別な命令を強化」「複数の企業や大学がコラボレーション」などを挙げた。さらに、RISC-Vへ移行する企業数が増えることで、より強固なエコシステムが構築されることも強みとなる。なお、プロファイルは「RVA20」が初めてのメジャーリリースで、次のメジャーリリースは2023年に登場する予定の「RVA23」となる。
Asanovic氏は、SiFiveにおける採用事例もいくつか紹介した。その一つはNASA(アメリカ航空宇宙局)向けに、Microchip Technologyと協力して契約したRISC-Vベースのプロセッサである。この用途では自律動作などが求められるという。採用された理由として、「従来のプロセッサに比べ100倍の性能を有していること」や、「20年後も利用されているISAであること」などを挙げた。
もう一つの事例は、ルネサス エレクトロニクスとの提携である。ルネサスは車載向け製品に、自動車向け機能安全規格「ISO 26262」に対応した「SiFive Automotive」を搭載する。「安全性重視という点では、NASAの事例とつながるものがある」(Asanovic氏)という。
この他、GoogleやQualcomm、Samsung Electronicsなどがサーバやウェアラブル端末、民生機器などにRISC-Vコアの採用を決めているという。さらに、Intelと協力して開発している評価ボード「HiFive Pro P550」も紹介。2023年には入手できる見通しだ。
SiFiveは既に、100社以上の顧客から300件以上のデザインウィンを獲得している。しかも、大手半導体メーカー10社のうち8社と協業中だという。SiFive Japanの社長を務めるSam Rogan(サム・ローガン)氏は、「2024年にはRISC-Vの出荷コア数がArmを上回り、逆転するのではないか」との見方を示した。
中国や北米、インドの大学などでは、RISC-Vに関する教育が進んでいる。日本市場でも、同様に大学や研究機関との連携を強化していく計画である。
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