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半導体業界の主役の座を担い続けそうなTSMC ―― 半導体大手3社の業績を考察大山聡の業界スコープ(62)(2/3 ページ)

混沌とした半導体市況の中において、その中心的存在とも言えるSamsung Electronics、Intel、TSMCの半導体大手3社の現状を分析し、各社の今後の見通しについて述べる。【修正あり】

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毎四半期、増収増益のTSMC

 図3は、TSMCの四半期毎の売上及び営業利益の推移をグラフ化したものである。

図3:TSMCの四半期営業利益推移
図3:TSMCの四半期営業利益推移[クリックで拡大] 出典:TSMC決算資料からGrossberg作成

 市況の低迷や自社製品出荷の遅れで減収減益を余儀なくされている前述のSamsung/Intelとは対照的に、四半期毎に増収増益を実現している。しかも驚異的なのはその収益性で、2022年10〜12月期の粗利率は62%、営業利益率は52%という高さである。自社半導体製品の設計も製造も手掛ける垂直統合型デバイスメーカー(IDM)のSamsung、Intelとは異なり、ファウンドリー事業に専念しているTSMCが、「業界で一人勝ちを収めている結果が数字に表れている」と言えよう。

 この点をもう少し補足すると、この大手半導体メーカー3社はそれぞれメモリ部門、MPU部門、ファウンドリー部門でトップの業績を誇り、異なる特長を持っている。IDMであるSamsung/Intelの2社もファウンドリー事業ではTSMCと競合している。TSMCの顧客をSamsungが奪った、Intelが奪った、という事例も過去には存在するが、最先端プロセスに関しては現時点でTSMCが2社に圧倒的な差を付けている。特に最先端のEUV(極端紫外線)露光装置を使いこなしているTSMCと、まだ使いこなせていないSamsungおよびIntelの違いが最先端プロセス分野での実績に表れている、といって良いだろう。TSMCの7nmおよび5nmプロセスにはEUV露光装置が必需品として採用されているが、これらプロセスによる売上高は2022年10〜12月期で54%を占めている。EUV露光装置を供給できる装置メーカーはASMLの1社だけだが、その約8割がTSMC向けに出荷されている、と推定されるのである。

【修正:2023年2月16日18時10分 当初「DUV露光装置」としていた箇所は「EUV露光装置」の誤りです。お詫びして訂正いたします。】

 図4は、TSMCの四半期毎の売上高推移をアプリケーション別に示したものである。

図4:TSMCの四半期売上高のアプリケーション別内訳推移
図4:TSMCの四半期売上高のアプリケーション別内訳推移[クリックで拡大] 出典:TSMC決算資料からGrossberg作成

 最先端プロセスへの需要が高いスマホ向けとハイパフォーマンス・コンピューティング(サーバー用プロセッサなど)向けが売り上げの中心になっているわけだ。ただ、いずれのアプリケーションも需要が伸び悩んでおり、さすがのTSMCも2023年1〜3月期は2022年10〜12月期の売上高を下回る見込みのようである。

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