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Intelとメモリメーカーは生き残れるのか? 〜驚愕のMPU/メモリ市況湯之上隆のナノフォーカス(60)(1/5 ページ)

MPU、DRAM、NAND型フラッシュメモリの市況が大変なことになっている。半導体メーカーの統廃合が起きるかもしれない――。そう思わざるを得ないほど事態は深刻だ。

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PCでWBCを観戦したが……


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 2023年3月22日に行われたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で、大谷翔平選手の投打に渡る大活躍などにより、日本は米国を下して優勝を飾った。前日に行われた準決勝のメキシコ戦のサヨナラ勝ちに続いて、手に汗握る決勝戦に(EE Times Japanの記事を書くのも忘れるほど→スミマセン)、狂喜乱舞した。

 筆者は、3月10日から始まったWBCの日本戦をPCのAmazon Prime Videoで見ながら、もう1台のPCで仕事をしていた(全然仕事が手につかなかったが)。日本代表の栗山監督が「野球ってすごいな」とインタビューで答えていたが、本当にすごいものを見せてもらったと思った。

 しかし、PCでWBCを見て「やったあ」などと叫んでいた反面、「このPC市場とそれに使われる半導体が大変なことになっているんだよな、それを記事にするんだよな」と憂鬱な思いに悩まされていた。

 日本のWBC優勝に水を差すような話になって申し訳ないが、本稿では、PC市場の成長に急ブレーキがかかっており、それに伴ってプロセッサ(MPU)、DRAM、NAND型フラッシュメモリが、目を覆うようなひどい事態になっていることを報じる。そのため、米Intelとメモリメーカーが苦境に陥っていると考えられる。もしかしたら、半導体メーカーの統廃合が起きるかもしれない。事態はそれほど深刻である。

急上昇して急降下したPC市場

 図1に、PCの四半期ごとの出荷台数を示す。PCは2011年第3四半期(Q3)に、過去最高の9540万台を出荷する。しかしその後、上下動しながら減少していき、2019年頃には6000万〜7000万台に落ち込む。


図1 四半期ごとのPC出荷台数と対前年成長率[クリックで拡大] 出所:Gartnerのデータを基に筆者作成

 この理由は次のように考えている。2007年に米Appleが「iPhone」をリリースした。2010年頃から本格的なスマホの時代が到来した。そして、そのスマホがPCを駆逐し始めた。その結果、2011年頃をピークにPCが売れなくなり、出荷台数が右肩下がりに減少していったのだろう。

 ところが、2020年に、コロナの感染が世界的に拡大した。そのため、リモートワーク、オンライン学習、ネットショッピングが爆発的に普及していった。そして、そのツールとしてPC需要が急拡大した。2021年Q1には対前年成長率がプラス60%となった。さらに、同年Q4には、2011年のピーク時に迫る9130万台を出荷した。

 しかし2022年になると、ワクチン接種が進み、コロナのリスクが低減されたこともあり、世界中の多くの人々はステイホームから解放されてリアルな活動を開始した。その結果、コロナ特需で急拡大したPC出荷台数は、一転して急降下することになった。

 2022年Q4には、対前年成長率がマイナス28.5%となり、出荷台数もコロナ前の水準の6530万台に落ち込んだ。データはここまでしかないが、2023年Q1以降は、もっと出荷台数が下がりそうな気配である。となると、PCに使われる代表的な半導体のMPU、DRAM、NANDの出荷状況は、現在どうなっており、今後どうなるのだろうか? 以下では、世界半導体市場統計(WSTS)のデータを基に、3種類の半導体の出荷額の分析を行う。

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