コード不要のモータ制御、iMOTION 新IPMの詳細を聞く:embedded world 2023(1/2 ページ)
ドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2023」において、Infineon Technologiesの担当者が取材に応じ、エアコン室内機の小型ファン用モーターなど向けに最適化されたIPMの新製品「iMOTION IMI110」シリーズの詳細を語った。
Infineon Technologies(以下、Infineon)はドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2023」(2023年3月14〜16日)に出展。ブースで同社の担当者が取材に応じ、エアコン室内機の小型ファン用モーターなど向けに最適化されたインテリジェントパワーモジュール(IPM)の新製品「iMOTION IMI110」シリーズの詳細を語った。
「モーター制御を可能な限りシンプルに」
iMOTIONは、比較的小容量の永久磁石同期モーター(PMSM)制御向けのソリューションで、2015年に買収したInternational Rectifierの製品をベースとし、その後も拡張を進めているものだ。同社のIPC事業部(2023年4月からGIP:Green Industrial Power事業部)シニアプロダクトマーケティングマネジャーであるIngo Skuras氏は、iMOTIONの特長について、「モーター制御を可能な限りシンプルにすることをテーマに、必要なハードウェアとソフトウェアの両方を統合した製品だ」と説明する。
iMOTIONでは、PMSMモーターのセンサーレスFOC(Field Oriented Control:磁界方向制御)に必要なハードウェアロジックとアナログインタフェースを全て統合。さらに、FOCアルゴリズムを組み込んだモーター制御ソフトウェア「MCE(Motion Control Engine)」を実装し、「モーター制御のための製品グレードのソフトウェアや各種ツールによって、顧客はソフトウェアを開発する必要がなくなり、迅速に製品を市場投入できる」(Skuras氏)としている。同時に、小規模な仮想マシンであるスクリプトエンジンもMCEに統合。顧客固有のスクリプトを実行でき、幅広いアプリケーションに柔軟に対応できるという。
MCEはiMOTION全製品で共通のものになっている。同氏は、「顧客は一度扱い方を覚えれば、全製品を扱うことが可能になる。また、ソフトウェアは継続的に開発を進めており、現在は半年ごとに新バージョンをリリースしている。2024年以降は、このサイクルを毎四半期と加速し、より迅速な顧客要望への対応を実現していく予定だ」としている。なお、同社のソフトウェアは家庭電化製品向けの安全規格UL/IEC60730(クラスB)を要求されるアプリケーションの認証を事前に取得済みという。
同社は、システム構成用のツール「Solution Designer」も提供している。Solution Designerは、容易なパラメーター設定ができる「System Configuration Wizard」、オシロスコープのように波形を見ながらパラメータを調整できる「Detailed Parameter Tuning」のほか、「Script Editor and Debugger」および、制御ループからあるブロックを外し、独自のブロックに入れ替えるなどの作業をグラフィカルなインタフェース上で実行可能な「Customized Control Loop Design」(現在は未実装。Skuras氏は「2023年中にも提供したい」とコメント)で構成されている。これらのツールや評価キットを用いることで、「どんなモーターでも、1時間以内に動作させることができる」としている。
iMOTIONの製品シリーズは、ハードウェア面での統合レベルによって3種類に分かれている。まずはMECを実装したコントローラーのみの「iMOTION Controller」、ゲートドライバーを統合した「iMOTION Driver」、そしてコントローラー、ゲートドライバーに加えて6個のパワーMOSFETまたはIGBTによる3相電力段も統合した「インバーターを完全にパッケージ化した製品」(Skuras氏)である、「iMOTION IPM」だ。今回、Skuras氏が紹介したのは、このiMOTION IPMの新製品として同社が2023年3月に発表したIMI110シリーズだ。
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