ハーバード中退コンビのLLM向けチップ新興が資金獲得:企業価値は3400万ドルと評価(1/2 ページ)
ハーバード大を中退した20代コンビによるAIチップ新興Etched.aiが、シードラウンドで536万米ドルを獲得した。同社のLLMアクセラレーターは、NVIDIAのH100 PCIeと比較し、1ドル当たり140倍のスループットを達成できるという。
ハーバード大学を中退した21歳の2人組が立ち上げた半導体スタートアップEtched.aiが、シードラウンドで536万米ドルの資金を獲得した。同社は、大規模言語モデル(LLM)アクセラレーション専用のAIチップを開発する予定だ。今回の投資ラウンドは、Primary Venture Partnersが、MAX Venturesの他、Ebayの元CEO(最高経営責任者)であるDevin Wenig氏などのエンジェル投資家たちと共に率いたという。Etched.aiは今回のシードラウンドで、3400万米ドルの企業価値があると評価された。
「1年休学のつもり」から、半導体メーカー設立へ
Etched.aiのCEO(最高経営責任者)であるGavin Uberti氏は、米国EE Timesの取材に応じ、「ハーバード大学を1年間休学するつもりだったが、結局OctoML(米国のソフトウェア企業)で、オープンソースコンパイラ『Apache TVM』やマイクロカーネルなどの開発に取り組む仕事に就くことになった」と述べている。
Uberti氏は、「ArmのCortex-M4コアおよびCortex-M7コアに向けたマイクロカーネルの開発に取り組んでいた時、Armの命令セットには8ビットのMAC SIMD命令がなく、16ビットだけであることに気付いた(M4とM7は、数多くの他の8ビットSIMD演算をサポートしているが、8ビットMAC SIMD命令はHeliumで導入されたものである)。つまり、8ビットMAC SIMD演算は事実上、半分の速度で動作していたということだ」と述べる。
同氏は、「これを修正することは不可能だった。私は仕事に行く度に、この問題に対応しなければならなかったため、Chris(Etched.aiのCTO[最高技術責任者]であるChris Zhu氏)と共に改善の必要性を感じていた。それと同時に、言語モデルの分野に変化が起きていることも分かっていた」と述べる。
またUberti氏は、「最近では、ChatGPTのような、トランスフォーマーアーキテクチャをベースとしたLLMに対する関心が急激に高まっている」と言及している。
Uberti氏とZhu氏は、LLM向けにもっと効率の高い推論アーキテクチャを開発すべく、半導体メーカーを設立することを決断した。現在のところ、LLMに特化したアクセラレーターは市場に存在しないが、NVIDIAがトランスフォーマー向けのソフトウェア機能を発表しているだけでなく、他のアクセラレーターメーカーも、言語/ビジョントランスフォーマー向けのサポートを発表している。Etched.aiはさらなる専門化を進め、既存企業に対抗していく考えだという。
Uberti氏は、「われわれが取り組んでいるような改善は、汎用化で対応できることではない。AI(人工知能)だけでなく、何か特定のものに対して、1つのアーキテクチャに賭ける覚悟が必要だ。最終的には、NVIDIAがそれを実現するのではないだろうか。われわれとしては、無視できないほど大きなチャンスだとみている」と述べる。
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