パワー系IC不足感は継続、24年以降さらに不足か:需要増も、設備投資少なく(1/2 ページ)
2023年6月に開催されたOMDIA主催のセミナーイベントで、同社のコンサルティングディレクターである杉山和弘氏が講演を行った。一部半導体不足の継続や、米中対立下での各国企業の動き方について分析した。
OMDIAは2023年6月22日、セミナーイベント「Global Semiconductor Day Summer 2023」を開催。同社のコンサルティングディレクターである杉山和弘氏が「2023年の半導体市場の需要はどうなっている 今後注目すべき市場・地域は?」と題した講演を行った。杉山氏は「パワー系ICの不足感は続いている」としたほか、米中対立下でも各国企業は中国市場獲得に意欲的であることなどを説明した。
2023年の半導体業界は「市況悪化からの回復が遅れている」
2023年の半導体業界について杉山氏は「厳しい状況に直面しており、『我慢の年』といえる。市場規模は2022年比で10%程度減少する可能性がある」と分析。四半期ごとにみると、市場規模は2022年第1四半期から5四半期連続で前期比マイナス成長となっており、2023年第1四半期は前年同期比で約75%まで減少した。2023年第1四半期の各社決算では、前期比でIDM、ファブレス企業ともに売り上げが減少。全体で9.2%減となっている。同氏は「半導体は、山や谷はあるが長期的に成長を続けてきた市場。以前は市況が悪化しても1年ほどで回復していたところだが、今は回復が遅れている。前期比マイナス成長の状況が今後も続いて、縮小傾向が丸2年になることもありうる」と見解を述べた。
こうした半導体業界の市場規模縮小傾向の背景について、杉山氏はGDP(国内総生産)との相関性を指摘。「市場動向を追う上ではマクロな経済動向を注視する必要がある」とした。経済不安や物価高が逆風となり、特にスマートフォンなどの民生機器の需要が下がっていることが半導体売上に悪影響を与えているという。
業界全体に逆風が吹く中でも一部企業は好調だ。生成AI向けGPUを手掛けるNVIDIAの売上高は2024年度第1四半期(2023年2〜4月期)、前四半期比19%増となる71億9000万米ドルに達した。杉山氏は「生成AIには膨大な需要があり、NVIDIAに競合がいないような状況。好調はしばらく続くとみている」と分析した。
2024年以降の半導体市場については「2024年は経済が回復し、半導体市場も需要が回復するだろう」とした。
パワー系ICは不足感続く
ここ数年続いていた半導体不足について、杉山氏は「先端ノード(14nm以降)、マチュアノード(28〜90nm)、レガシーノード(110nm以上)の全てでほぼ解消する見込みだ」とした。ただし、先端ノードは需要が右肩上がりである一方で製造ラインの稼働率が低下しており、今後不足感が出てくる見込みだという。マチュアノードは現在需要と供給がつり合っているが、コロナ禍で設備投資が行われたため今後供給過剰となる可能性もあるという。レガシーノードは設備投資が限定的で製造キャパシティーが増えていないため一部は不足が継続する見込みで、同氏によると「特にIDMが供給するパワー系IC、ディスクリートなどはまだまだ不足している」という。2024年以降はカーボンニュートラル化に向けた需要が盛り上がり、再び不足感が強まる可能性がある。
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